地雷カプブルー


「小学校までの俺は、輝星のことが大好きすぎたんだ。俺の執着のせいで死の淵に追い詰めて、本当にごめん」

「大好きだったって……やっぱり過去形なんだね……」

「え?」


眉を下げた輝星の声が聞き取れなくてハテナを飛ばすも、何を言ったかは教えてはくれない。

「なんでもない」と首を振る輝星の笑顔が、引きつっているように感じてしまうが。


 自分の表情をくるりと回転させるための気合い入れなのか、輝星がパンと両手を叩いた。


「霞くんは奏多くんとお似合いだしね」


 と微笑んで


「あっ、変な意味じゃなくて。霞くんの恋の邪魔をしようとも思ってなくて」


 今度は焦ったように両手を小刻みに振って


「だって僕……一応……カスミソウが推しカプだし……」


 恥ずかしそうに人差し指同士を、ツンツンとつついている。


 表情が変わりすぎていろいろ突っ込みたいところだけど、一番引っかかったのは……


「ん? カスミソウ?」

「霞くんと奏多くんのことだよ。知らない? 高校の女子たちからそう呼ばれてるの」


 知ってはいたよ。

 俺と奏多がテニスでペアを組んでるから、二人の名前をくっつけているんだよね。

 プロスポーツ界でもあるし。

 輝星からその言葉を聞くなんて思ってもいなかったから、びっくりしただけで。
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