振り向いて欲しくて〜初恋は甘くてちょっとほろ苦い〜
「見んなよ」



思わず見入ってしまっていたようだ。



「す,すみません…!!」



ビックリしてパッと前を向く。



はぁ〜 こ、怖い…。



もう背後が振り向けなくなった私は、プリントを回す時に絶対に目を合わせないようにパッと下を向いてプリントを回すと、すぐに前を向いた。



「おい」



「へ…?」



突然後ろから低い声がして振り返ると、後ろの彼は、少しぶっきらぼうに言った。



「一枚多いんだけど」



ふぇ…?



あっ…!!



私、後ろに回すのに夢中で自分のプリント取ってなかった!!



「あ、あの…。すみません、それ、私のです…」



すると彼は、はっ?何してんのこいつと言っているような顔をして、無言でプリントを返してくれた。



はぁ〜…



私のドジ。おっちょこちょい。



入学式早々ホント何してんの。



自己嫌悪になりながらも少し恥ずかしくて、彼の顔が忘れられなくて、そっと俯いていた。



今日は入学式だから、先生の話が終わったら、すぐに帰れる!



……なんて思っていたら



「じゃあ時間も余ったから一人ずつ自己紹介していくか!」



…へ?



ちょっと、先生。何言っちゃってるんですか?



ただでさえ人前に立つのが苦手なのに、こんなこと聞いてないよー…



そんな私の願いも虚しく、自己紹介はどんどん進んでいく。



私の順番に来た時には、もう心臓バックバク。



さっきのこともあってか,もしかしたら入学式以上の緊張かもしれない。



「鈴宮、早く」
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