名前
「そんなの騙したのはそっちだって話せば……」
『ヤクザの娘と善良な一般市民。警察がどっちを信用すると思う? 諦めておとなしく田舎に帰りな』
一方的に電話は切られた。
悪い夢を見ているみたいだ。どうしようもない虚無感に言葉もでなくなる。
隣で志摩がため息をついた。今のやり取りで全て悟ったんだろう。
呆然とする私の顎をすくい上げ、瞳の奥をのぞきこむ。
「なぁ、お嬢。その久住って男はどこにおるんじゃ」
「し、知ってどうする気……?」
「別にぃ。ちょっとお話するだけじゃ」
八重歯を見せてにっこりと笑う。けれど目は怖いくらい冷たかった。
狂気がにじむ表情に背筋がぞくりと震えた。
「い、いやだ」
首を横に振ると、志摩の顔から笑みが消える。ダルそうに前髪をかき上げながら立ち上がった。
「じゃ、自力で探すわ。どうせ半グレじゃろ。しらみつぶしに当たればそのうち見つかる」
私は震える指で志摩のシャツを掴んだ。