名前
「お金はもういい。騙された私が悪かった。だから、行かないで」
「なに泣きそうな顔しよん」
「半グレだとしたら仲間がいるかもしれない。通報されて警察に捕まるかもしれない。危ないことしないで」
私がヤクザの娘だとわかっていて騙したんなら、相手も相当やばい奴だ。志摩がひとりで乗り込んで、無事ですむわけがない。
「安心しぃ。危ないことなんてせんけぇ」
志摩はいつものように軽薄な笑みを浮かべ、平気な顔で嘘をつく。
「待って。お願いだから行かないで」
「お嬢が騙されるってことは、組の面子を潰されたんと一緒じゃけぇ、黙ってられんじゃろ」
「面子なんてどうでもいいよ。そんなくだらないことにこだわって、怪我したり死んじゃったりしたらどうするのよ!」
「どうせ生まれたことに意味もない、クソみたいな人生じゃ。死ぬことなんて怖くない」
「やだ! 志摩行かないで!」
私の言葉を無視して志摩は出ていった。
こんなに必死に叫んでも、引き留めることができなかった。
志摩にとって私はなんの価値もないんだと思い知らされる。