名前
『余命半年。ステージ4。もう手の施しようのないほど末期のガンだとよ』
予想外の言葉に頭が真っ白になる。
「嘘だぁ。だってあんなに元気そうだったのに」
冗談でしょ? と笑おうとしたけれど、声が震えた。
後藤さんは無言だった。その沈黙で嘘じゃないんだと悟る。
スマホを持つ手が冷たくなっていく。
『余命宣告されて、志摩は迷わず桜子ちゃんに会いに行ったんだよ』
「なんで」
『あいつには、桜子ちゃん以上に大切なものはないから』
言い切られ、喉が詰まった。
「大切になんてされてない。志摩が私にかまうのは、組長の娘だからでしょう?」
『本気でそう思ってるのか』
「だって、からかうばかりで相手にされなかった。ほかの女の子は簡単に抱くのに、私のことは名前すら呼んでくれなかった」
私が言うと、後藤さんは『名前ね』と笑った。