名前
 

「言ってほしいなら、まず自分から言うのが筋じゃろ」
「え。やだ」

 今更志摩に好きだなんて、恥ずかしくて言えない。

「じゃあわしも言わん」
「ケチ」
「お互い様じゃ」
「むかつく」

 無言で睨み合って、同じタイミングで噴き出した。額を合わせ、笑いながらキスをする。

 半年後に志摩は死ぬ。だけど私たちは幸せだった。この時間を、きっと一生忘れない。

 私の太ももに手をかけた志摩が「やばいな」とつぶやいた。

「好きな女を抱くのははじめてじゃけぇ、ガラにもなく緊張しとる」

 その言葉を聞いて、志摩の脇腹を蹴ってやった。

「いて。なんで蹴るんじゃ」
「私なんて、キスすら初めてなんだからね!」
「まじか。そりゃ責任重大じゃな」
「そうだよ。責任重大だよ」

 そう言って志摩を睨む。

「だから、責任とって死ぬまで愛して」

 私の言葉に、志摩が笑った。

「そんなことでいいなら、お安い御用じゃ」


◇◇◇

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