名前
◇◇◇
火葬場の外に出ると、喪服姿の後藤さんが立っていた。
煙突から出る煙を眺めながら、ひとり煙草を吸っていた。
近づくと、私の足音に気付いて煙草を消してくれる。
その気遣いに「ありがとう」とお礼を言う。
「桜子ちゃん、疲れただろ。無理してない?」
「大丈夫。みんながいてくれるから」
「そっか。よかった」
ふたり並んで煙を見上げる。丁度火葬炉では志摩の体が焼かれていた。
「あっけなく死んじまったな」
「余命宣告って、当たるもんなんだね」
ある朝、目覚めたらガンがなくなっていた。なんて奇跡が起こるはずもなく、志摩の病気は着々と進行し、あれから半年後に亡くなった。
おかげで結婚数カ月だというのに、私は早くも未亡人だ。まぁ、この選択に少しの後悔もないけれど。
「あいつ、悔しがってたな。もっと生きたいって」
後藤さんの言葉にうなずく。