戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 シルファは無意識にごくりと生唾を飲み込むと、そっとその魔力の塊に触れるイメージで魔力の吸収を試みる。包み込むように、少しずつ吸い上げていく。想像以上に魔力が強く、一度に吸収できる量は随分と限られてしまいそうだ。

 手のひらを介し、ルーカスの魔力がシルファの中に流れ込んでくる。

 熱い。けれど、恐ろしくはない。

 シルファは腹の底で自身の魔力を練り上げ、体内を巡るルーカスの魔力と混ぜ合わせるように魔力を注ぐ。

 ゆっくり、少しずつ、二つの魔力は溶け合っていく。

 そっと目を開けて手を離し、両手のひらを上にすると、中和した魔力がほのかな光を発しながら空気中に溶け込むようにして消えた。


「……ふむ、魔力を吸われるというのは奇妙な感覚だな」

「気持ち悪くありませんでしたか?」


 今日吸い取ることができたのは、膨大な魔力のほんの一部にすぎない。けれど、魔力を吸われる感覚というものがシルファには分からないため、ルーカスに所感を窺う。


「いや、むしろ心地いいくらいだった。君の魔力は温かいな」


 ふわりとした微笑みと共に紡がれた言葉に、思わず胸を詰まらせる。

 そんなことを言われたのは初めてだ。ルーカスはどれほどシルファを歓喜させれば気が済むのだろう。

 視界が揺れそうになるのをグッと堪え、シルファは努めて笑顔を作った。


「……ありがとうございます。その、一度にあまり多くは吸えないので、毎日少しずつ、退行魔法の解除を目指して頑張っていきましょう」

「ああ、よろしく頼む」


 互いに感じた相手の魔力の感想を語り合っていると、程なくしてエリオットが夕飯の支度を整えてキッチンから出てきた。





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