戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「む、加減を間違えたか」


 その日の夕方、書類仕事を手伝っていると、ルーカスの独り言を耳が拾った。

 顔を上げて様子を窺ったシルファは、思わず目を眇めた。どうやら回路に流し込む魔力量の調整を読み違えたらしく、新型ランプが眩し過ぎるほどの光を放っていた。

 魔導具に回路を刻む時、魔導師は自らの魔力を流して術式を構築していくのだが、魔力量を誤ってしまうと魔導具は正常に動作してくれない。注いだ魔力が少なすぎる場合は、新たに注ぎ直せば事足りるのだが、注ぎすぎた場合はそうもいかない。

 どうやら普通の魔導師は、人や物といった対象から魔力を吸うことはできないらしい。そんな芸当ができるのはシルファだけだと言われた時はとても驚いた。

 そのため、回路に魔力を注ぎすぎた場合、その魔導具は失敗作とされる。分解されて再利用できる部位は再利用され、残りは廃棄されることになる。

 煌々と輝くランプを眺めていると、ふとした考えが浮かぶ。


(飽和した魔力を吸い取るのと同じ要領で、余剰な魔力を吸えば……もしかすると)


 このままだとせっかくルーカスが作り上げた魔導具がバラバラに分解されてしまう。同じ執務室で日々仕事をしてきて、彼がどれほど魔導具を大切に扱い、研究に没頭しているかを知っているだけに、どうにかしたいという気持ちが膨れ上がる。


「あ、あの……魔力を注ぎすぎたのでしたら、私が吸収してみましょうか……?」


 椅子に浅く腰掛けたまま、小さく手を上げておずおずと申し出ると、ルーカスは数回目を瞬いた後、「それだ!」と大きな声を上げた。





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