戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 それからさらに十日後、シルファは今、一張羅のワンピースを身に纏っている。

 淡い水色のシャツに紺色の膝下丈のフレアスカート。裾に入れられた白のラインがアクセントとなっている。いつも下ろしている髪もゆるくポニーテールに纏め、久々の外出に心が浮き足立っている。

 ルーカスと契約結婚をしてすでに二ヶ月近くが経過した。

 魔塔の様子に詳しいエリオットによると、ルーカスとシルファの結婚に関心を示していた職員たちも平常運転に戻りつつあるらしく、デイモンも目立った動きがないため、そろそろほとぼりも冷めた頃だろうと久々の外出許可が出たのだ。

 魔塔の最上階に来てからも、シルファはしっかりと休暇をもらっている。とはいえ、どこにも出かけることができないため、大抵は書庫で読書をしたり、魔法の勉強をしたりと、特に代わり映えのしない休日を過ごしてきた。
 今の生活に不満こそないが、外に出られるのは素直に嬉しい。


(街に出るのは本当に久しぶりね。まずは本屋に行って、ルーカス様とエリオット様にお土産のお菓子を探して……)


「シルファ」


 念の為、魔塔の下まではエリオットが送ってくれることになっているため、彼を待っている間に今日の予定を頭の中で組み立てていると、ルーカスに声をかけられた。


「はい」


 いつの間にかすぐそばまで来ていたルーカスは、チョイチョイっとシルファを手招きした。


(腰を落とせってことかしら?)


 少し屈んでみせると、ルーカスはシルファの胸元に手を伸ばして何かをつけてくれた。


「外に出るならこれを肌身離さずつけておけ」

「……ブローチ?」





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