戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 魔塔に篭っている間に、すっかりと過ごしやすい季節となっている。
 新緑が青々と生い茂り、木陰は程よく涼しい。頬を撫でる風も心地よい。

 魔塔を降りたシルファは、まず真っ先に本屋へと向かった。

 ルーカスにたんまり給金をもらっているため、今日は奮発して二冊ほど本を買おうかと思っている。荷物になってしまうので、まずは下見を。それから帰りに目星をつけた本を買って帰るという算段だ。

 隅から隅まで本棚を確認し、小一時間ほどかけてたっぷり吟味した結果、子爵家でよく読んでいた冒険小説と、その続編が出ていたため合わせて二冊購入することに決めた。

 ホクホクした気持ちで通りに出て、街ゆく人々を眺めながら歩みを進める。
 ちょうどいい気候で、シルファの足取りも自然と軽やかになる。

 休日とあって、友人同士や家族連れで街は賑わっている。


(サイラスを誘えば良かったかしら。でも、契約結婚のことは話せないし……)


 出来損ないのシルファにとって、友と呼べるのは同僚のサイラスだけだ。

 エリオットの計らいで、最上階の一つ下の階で作業をするようになったサイラス。最近では、シルファもエリオットの付き添いでメンテナンス対象の魔導具をサイラスに直接手渡すこともある。とはいえ、以前のように一日中一緒にいるわけではないので、積もる話もあるというもの。


(いつか、ルーカス様が元の姿に戻ったら……一緒に街歩きをしてくれるかしら)


 仲睦まじく歩いている恋人同士を見つめながら、ぼんやりとそんなことを思った。






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