眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛

18 近距離

「ヴェルデ」

 ヴェルデを呼ぶ声がして振り返ると、そこには黒い艶やかな長い髪にタンザナイト色の瞳、ワインレッド色のドレスに身を包んだとても綺麗な女性がいる。

「ノエル……!」

 ヴェルデは大きく目を見開いてその女性を見つめる。フェインは少し気まずそうな表情で二人を見てからローラを見る。

(お知り合いなのかしら?)

 ローラはガレス殿下以外でヴェルデの知り合いにはあまり会ったことが無い。そもそもヴェルデの仕事場は屋敷のすぐそばにあり、仕事仲間もフェインくらいだ。

「ヴェルデ、久しぶりね」
「帰ってきてたのか?」
「ええ、先週。数年ぶりに帰ってきて驚いたわ。あなた、結婚したんですってね」

 そう言って、ノエルはローラを見てにっこりと微笑んだ。

「こちらがヴェルデの奥様?」
「あ、ああ。妻のローラだ」
「初めまして。サイレーン国魔法省特級魔術師のノエル・ウィストンです」
「初めまして」

 ノエルが挨拶をすると、ローラもドレスの裾を掴みふんわりとお辞儀をする。その所作の美しさに、ノエルは驚いて声をあげた。

「すごい、まるでどこかのお姫様みたいね!綺麗だわ。こんな素敵な女性、どうやって手に入れたのよ。そもそも、あなた結婚する気なんてないって言ってたじゃない」
「それは……」

 ヴェルデが言いよどむと、ノエルは口角を上げてヴェルデの腕を掴んだ。

「ちょっ、なんだよ」
「久々に会えたんだし、二人で色々と話をしましょうよ。私とあなたの仲じゃない。ごめんなさい、ちょっとだけお借りするわね」
「え、あ、はい……」
< 36 / 48 >

この作品をシェア

pagetop