眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 ノエルはヴェルデの腕を掴み、人があまりいない広場の隅の方へ歩いていく。茫然としてみていると、隣にフェインがやってきた。

「悪いな、ノエルは悪い奴じゃないんだけど、思い切りがいいというか行動的というか」
「いえ。ヴェルデ様とノエル様は仲がよろしいんですね。昔からのお知り合いなのですか?」
「あー、うん、そうだな。ノエルは魔法省の人間なんだけど、一度国からの依頼で魔法省と一緒に長期で研究することがあったんだ」

 ノエルも魔法省の中ではかなりの実力者で、ヴェルデと研究の話で意気投合したらしい。

「ヴェルデも俺も、魔法省所属じゃなくて国の直接管轄なんだ。だからあまり詳しく知らない魔法省について色々話を聞いたりもして、仲良くなったんだよ。……まあ、それだけじゃないんだけど」

 バツの悪そうな顔でフェインは二人を見つめる。最後の言葉は一体どういうことだろうか?不思議に思いながらローラも二人へ視線を移すと、とても嬉しそうに笑っているノエルと、すこしたじろ気ながらも呆れたような顔で苦笑しているヴェルデがいる。

(ヴェルデ様、普段では見たことのない顔をしてらっしゃるわ)

 どことなく気楽そうな雰囲気だ。それだけ二人は仲がいいと言うことなんだろう。そう思って二人を見ていると、ふいにノエルがヴェルデの腕を取って体を密着させる。

(とても近い……)

 ヴェルデは慌ててすぐに体を離そうとするが、ノエルがそれを制してくっついたままだ。そんな二人を見て、ローラの胸の中にモヤモヤしたものが生まれてくる。

「なあ、ローラ、あの二人のことはとりあえず放っておいて、何か食べ物を取りに行かないか?それとも、何か飲むか?」

 ローラの様子を察して、フェインが気遣ってくれる。フェインに申し訳ないなと思い笑顔を作って返事をしようとすると、視界に影がかかった。

「失礼。あなたがヴェルデの結婚相手ですか」

 声のする方を見上げると、そこには背の高い短髪の壮年の男がいた。

< 37 / 48 >

この作品をシェア

pagetop