The previous night of the world revolution
…何の、冗談なのだろうか。

最初に思ったのは、それだった。

「…ちょっと、意味が分からないんですけど」

今何て言った?今回の暗殺未遂事件の犯人が、俺?

成程俺は女王暗殺を企てた犯人だと。それを思えば、拘束されていたこともあの看護師達の態度にも納得出来るが。

「犯人って何ですか?犯人は…」

「クリュセイス家の当主だ。そうだろう?」

「そう、そいつでしょう?俺は女王を庇いはしたけど、銃を向けてはいない。それをしたのはクリュセイスの当主でしょう」

俺が責められる謂れはない。濡れ衣も良いところだ。

「確かに犯人はクリュセイス家の当主だ。だが…そういうことにする訳にはいかないんだ」

「…は?」

「先代国王が死去した後…ローゼリア女王が女王として擁立される前に、王宮内で秘密裏に、二人の人物が王位を巡って揉めたことを、貴殿は知らないだろう」

…ちょっと、待て。

何だそれは。

頭の中で、激しく警鐘が鳴っていた。

「ローゼリア女王は…先代国王の長子であったはず。他に継承権を争う者なんて…」

聞いたことがない。女王の妹だろうか?でも、ルティス帝国では代々、性別関係なく長子に継承権が…。

「兄だ。ローゼリア女王には腹違いの兄がいた。それが…クリュセイス家の当主。ゼフィランシア・エルディス・クリュセイス卿だ」

「…そんな…」

そんな馬鹿な。あの人、従兄弟じゃなくて…本当は女王の兄だった?

ちょっと待て。そんなことを。そんな王家の秘密を、何故俺に話す。

「だがクリュセイス卿は、先代王妃の子ではない。国王の愛人の子であったが故に、世間に公表は出来なかった。存在を隠す為に…彼はクリュセイス家に養子に出された」

「…」

「だから、先代国王が亡くなったときにクリュセイス家と揉めたんだ。本当は国王の長子はゼフィランシアなのだから、彼が王位を継ぐべきとな。だが世間では、ローゼリア女王が長子ということにされていた。先代国王に不義の子がいたなど、そんな王家の汚点を、公表する訳にはいかない」

だから、ゼフィランシアの訴えは無視され、ローゼリア女王が王位に就いた。

「一時は揉めたが、女王が王位に就いてからは、ゼフィランシアも落ち着いた。兄妹として、個人的に女王と親しくもしていたようだ。もう王位に未練はないのだろうと思っていたが…どうやらそうでもなかったようだな」

「…それが、何なんですか」

頭の中で、喧しいほどに警鐘が鳴り続けていた。

この話を、俺にするってことは。

「クリュセイス家の当主を、女王暗殺未遂の犯人にする訳にはいかない。そんなことをすれば、王家の秘密が世間に知られてしまう」

「…だから、その罪を俺に負わせるって?」

「そういうことだ」

「…あはは…」

笑うしかない。そんなの…笑うしかない冗談だ。

「…あなた、俺が無実だって知ってるんでしょう?」

「あぁ。知ってる」

「それなのに、俺を犯人にすると?」

「そうだ」

「…それは、誰の指示です」

「女王陛下自らの指示だ」

…成程。あの女。

どうあっても、ゼフィランシアの肩を持つ気か。

俺が庇わなかったら今頃自分が殺されてるってことが、理解出来ないらしい。

「そして、俺もそれに賛同した。クリュセイス家の当主が女王陛下を暗殺しかけたなどと、とてもではないが世間に公表出来ない。そんなことをすれば、国を揺るがすほどの混乱を招く」

「でも、俺なら良いって?ウィスタリアの次男なら、女王暗殺を企てても混乱を招いたりはしないと?」

「貴殿とクリュセイス家では、社会的影響が桁違いだ。それに…貴殿の『犯行動機』は、既に用意してある」

…それは、つまり。

…もう、選択肢など残されていないということだ。
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