うみに溺れる。


大切に、大切に。

シャボン玉を扱うように優しく。


ぱりんっ、と割れた音がして我に返った。
それは、海と付き合い始めて最初にくれたマグカップ。

大きな音がして驚いた母さんが僕の部屋のドアをノックした。



『雫玖?どうしたの?大丈夫?』

『…うん、大丈夫だよ』



机の引き出しの奥に隠していた海への指輪を取り出した。


僕はきっと、居ない方がいい。
それは今までずっと考えてきた事だった。
特に“今”ではなかったから、先延ばしにしていただけの事を今では、と考えた。



今が、そのタイミングなんじゃないか。



海の彼氏でいれる最高のタイミング。
幸せな時に居なくなる、潔く。
僕が海を傷付ける前に。


指輪をゴミ箱へと放り込んだ。

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