うみに溺れる。


朝や昼とは違った顔を見せる浜辺。

今日は曇りで月の明かりもなく街灯もないため真っ暗だったのに、定期的に聞こえる波の音ですぐそこに海がある事を感じた。
潮風が突き刺さるように冷たく寒い。


誰かに手紙を書いたのはアレが初めてだったから緊張した。



《空人へ》



宛名は彼しか考えられなかった。

書いている途中に思い浮かぶのは、楽しかった頃の記憶。

3人と一緒にいる時だけ、僕は何にも囚われない普通の人間だった気がする。

靴を履いたまま、ゆっくりと前に進んだ。
しばらくするとじんわりと靴が湿ってきて、一気に冷たい塩水が足を覆った。

ふぅ、と息を吐きまた足を進めて行く。
塩水が足首か、ふくらはぎ、膝下、遂に腰辺りまで来ていた。

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