うみに溺れる。


あの日、京都で皆とはぐれた日。
空人は間違いなくこう言った。



『…俺は、お前と付き合いたいとか、そんな事言わない。でも、……傍に居たい、』



その後はトントン拍子だった。
いつしか私達は付き合い始めたという噂が流れ始めて、私達もそれを否定しなかった。

その方が周りからすれば都合が良かったから。


空人も私もそんなに大差ない学力だった。
進学先も住む所もすぐに決まった。

お互いの両親も私達が付き合っていると信じている。
それは空人からの提案だった。
空人が望んだ“私と一緒にいたい”という事を叶える為にはその方が楽だったから。


「海?どうしたの?」

「ん?ううん。しばらくお母さんの料理食べられなくなるのは寂しいなぁって」

「…泣かせないでよ、もう」


2人とも無事に大学受験に成功し合格。
明日の朝に2人で決めた新しい家へと引っ越す事になっている。


「明日はすぐ行くんだっけ?」

「ううん、雫玖に挨拶して行く事になってる」

「そっか、挨拶し終わったらうちに寄りなさい。駅まで送ってあげるから」

「いーよ別に」

「いいから」

「はいはい」


修学旅行から帰って来てすぐに雫玖の遺書を見せてもらった。
懐かしいその文字にやっぱり泣いてしまったけど、後悔はない。

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