うみに溺れる。


翌日、雫玖の家の前で私は大きく深呼吸した。
雫玖が死んで以来の柊木家。

チャイムを押す手が震えた。


「…久しぶりだね、海ちゃん」

「挨拶、遅れてしまってすみません」

「いいのよ、こうして来てくれたんだから」


どうぞ上がって、と託されて空人と一緒に何年かぶりの雫玖の家へと上がった。

最後に見た時よりも痩せたおばさんの顔は雫玖に似ていて、ギュゥ、と心臓が掴まれたような感覚が襲った。


「…大丈夫か」

「うん」


初めて見る雫玖の仏壇。
そこには微笑む雫玖が写真立てに入っていた。

線香を立てて手を合わせた。


「…これから出発するの?」

「はい」

「気を付けてね」

「ゴールデンウィークには帰るので、またその時来てもいいですか?」

「うん、いつでも来てね」


おばさんは私の左手を見て寂しそうに笑った。


「……行ってらっしゃい」


本来なら雫玖もここにいたはずなのに。
そんな複雑な感情を感じて、深くお辞儀をした。


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