Rescue Me
 「…分かりました。では資料は八神副社長に全てお渡ししておきます」

 「それから……佐伯社長から会社のパーティーに呼ばれてただろ?あれ断っておいて。その代わり何かお祝いにメッセージと贈り物を。それと……」

 そう言いながら、彼は私が作成した会議用のレポートも手渡した。

 「これも急ぎで直しておいてくれ。直す箇所には付箋つけてあるから。蒼は英語の書類は完璧なのに日本語の方はイマイチだな」

 くっ……桐生さんは仕事の時は容赦無い。私が付箋の入った書類を受け取ると彼は荷物をまとめ立ち上がった。

 「いい子にしてろよ」

 そう言って私を抱き寄せると、シャツをクイっと指で押し下げ私の胸元にある赤い鬱血痕を露わにした。急に彼に言いたい事があったの思い出す。

 「そういえば桐生さん!あれほど痕はつけないでって──」

 彼はいきなり唇を奪うと、強引ながらも優しくキスをした。キスをしながら彼の親指が愛おしそうに鬱血痕を何度も撫でる。

 「久我に隙を見せるなよ。すぐ帰ってくる」

 そう言って桐生さんは慌ただしく外出し、結局終業時刻直前まで会社に戻ってこなかった。
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