【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
 それが繰り返されると、シェスティは自分の今の行動がそもそも疑問になってきた。

(私、挨拶回りできてる?)

 考え込んだ拍子に、つい足が止まってしまっていた。

「もう、どこかに行かないのか?」

 頭上から、そんな声が降ってくる。

 ハッとシェスティは顔を上げた。目の前には男の大きな背中がある。その肩越しにカディオが振り返って、彼女を見ていた。

 ――が、すぐに視線がそらされていく。

(あら? 機嫌がよくなったみたい)

 しげしげと見つめていたら、カディオの頬に赤味が増す。

「…………手」
「え?」
「あっ、いや、なんでも」

 慌てたように言って彼が顔を背けたが、両手に触れている背中の面積が、ぐっと増す。

「ちょっと、何後退しているのよ」
「す、すまない」

 すぐに謝られて、シェスティは戸惑う。

「大丈夫? 顔も少し赤いみたいだけど、体調不良が続いているの?」

 ぎくんっと彼の広い肩がはねる。尻尾がぴんっと立った際、先っぽがシェスティの頬にもふんっと触れた。
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