【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
 自分よりも一歩前に、ゆらりと立ったカディオ。シェスティは彼に対して初めて『声が出ない』という状況を体感した。

 ――怖い。

 本能が察知したみたいに、身体がぞわりと寒くなる。

 冷気の正体の一つは、コレでもあったらしい。

 カディオから出ている圧倒的な獣人族の〝威嚇〟。そして、圧倒された人々の肝が一瞬にして冷えたのだ。

(あ、思い出した)

 この国で王位を継承する条件は、他の獣人族を残らず畏怖させること。

 それは、この国で唯一〝黒狼〟である王家がそうだった。

 そしてカディオの血の濃さはも歴代の王の中でも三本指に入るといわれていた。
 持って生まれた武才は血筋によるもので『騎士王子』と呼ばれ、尊敬されている。

 その圧倒的な支持は、彼の次期王としての優秀さだけではないのだ。

「ふぅ、誤解だよカディオ」

 国王が、なんでもないようにため息をこぼす。しかしカディオとそっくりな彼の金色の瞳は、気が抜けないと言わんばかりに獣の緊張感と殺気で光っていた。
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