【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
「今のお前は余裕がないから、普段のような思考が七割は機能できていないのは分かっている」
「機能していますよ。シェスティを、別の男にやると?」

 その時、シェスティは切羽詰まった兄の「シェスティっ」と呼ぶ声を聞いた。

 金縛りにあっていたみたいな身体が、途端に動く。

 初めて見る本気の父子の喧嘩の緊迫感を前に、シェスティの心臓は苦しいくらい脈打っていた。けれど気付いたら彼女は、金髪とドレスのスカートを揺らして一歩前へと飛び出していた。

「…………カ、カディオ!」

 次の一歩を踏み込もうとしたカディオの胴体に、思い切り抱きついた。

 自分の体重をぐっと足元にかけて、彼をその場に留める。

 カディオがぴたりと身体を止めて、そして力も抜いていく。殺気もみるみるうちに小さくなるのをシェスティは感じた。

「喧嘩は、だめ。何を怒っているのかは分からないけど、ああたぶん、私の政略結婚のことを怒ってくれたのよね? 大丈夫よ、陛下は私にとって、第二の父みたいなものだもの。私が嫌がるような、不幸になるように結婚命令は、しないわ」

 たぶん、とシェスティは思った。
< 73 / 102 >

この作品をシェア

pagetop