【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
 両親が提案する相手と結婚する覚悟は、令嬢教育を王宮で早々にこなし終わってしまった時にはできていた。

 よくしてくれた国王と王妃、王宮のみんな。
 ウチは公爵家だから、国王たちが必要とする結婚先に嫁ぐことも視野には入れていた。

 けれど、カディオは違うのだ。

「私の代わりに、怒ってくれたのね。ありがとう、カディオ」

 彼の気配からピリピリとしたものが、完全に消えた。

「……そんなんじゃない、俺は……」

 こちらを見下ろした彼は、苦しそうな表情になったかと思うと、口をぱくぱくさせる。そしていつもみたいに、また彼の言葉はそのまま途切れた。

「まったく、とんだ息子ね。将来がほんと楽しみだわ」

 王妃の声がよく聞こえた。
 ふっと会場の様子をようやく目に留める心の余裕ができたシェスティは、いつの間にか静まり返っていることに気付く。

「シェスティ、カディオを休ませてきてくれる?」
「はっ?」

 急にカディオが焦った声をもらした。

「いや、ですが、俺は」
「分かりました」

 カディオは強がりだ。もう体調が限界なのだろうと察し、シェスティはしっかりと頷き返し、家族に先に退出すると告げ、いつの間にかそばにきていた護衛騎士隊長に誘導され、カディオの背を押して会場を出た。
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