ファンは恋をしないのです
 里依の努力もあり(?)ジョッキも含め、おつまみも30分程度で完食し、店を出ることになった。

「…すみません、ご馳走になってしまって…。」
「いえいえ!無理言って俺たちが一緒に飲もうって誘ったんだし。」
「俺たちっていうか、主にお前だからな。」
「まぁそっか。でも楽しかったしいいじゃん。また会ったら、作品の感想聞かせて。やっぱり直接聞けるの、嬉しいし。」

 二階堂がははっと笑う。本当は明るくて元気で少しやんちゃなお兄さんタイプなのだと、初めて知った。二階堂が担当するキャラクターは少し含みがあって、悪ぶっているところもある読めない性格だ。当たり前だが、本人とキャラクターは似ているところもあれど、明確に違っている。頭ではわかっていることだが、それをこの目で見ることができて、安心した部分も確かにあった。キャラクターの後ろにいる存在は、キャラクターの一部を担っていても、キャラクター本人じゃない。

「…それは、本当にそう。」

 静かに二階堂に同意した三澄は、表舞台に立っているときよりも随分静かな印象だった。

「ありがとうございます。…頑張ります、これからも。」

 三澄は里依と真っすぐに視線を合わせながら、そう言った。その声は『朋希』のものよりも少し低い。作っていない地声なのだろう。

「はいっ!応援します!朋希くんのカードのレベル上げ、頑張ります!」
「里依…オタクとしては100点満点の回答だけどさ、それ。」
「三澄よりも朋希の方が好きってことだもんなー。本人目の前にしてそれ言えるところが真面目。」
「そうなんです。里依って真面目なんです。」
「いやでも、好きなことが本当に好きなんだーって伝わるの、やってる側としては嬉しいですよ。自分を好きになってもらうことも嬉しいけど、演じたものを好きになってもらえた方が嬉しいときがある。…ちょっと変な感覚かもしれませんけど。」

 最後を引き取ったのは三澄だった。

「だからもしまた会えたら、その時はまた話してもらえると嬉しいです。回数重ねたら、落ち着いて話せる…かな?」

(ぐぅ…何その最後の『かな?』だけちょっと言い方違うし、声も違うしずるいー!)

 里依の中のオタク心が暴れ出す。心なしか耳が熱い。
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