ファンは恋をしないのです
「あの…失礼ながら、ここにいて大丈夫なんですか?」
「どうして?」
「スモハニの皆さんとご飯に行ったりとか…。」
「結構ね、予定が合うとちょこちょこ食事には行くんだよね、俺たち。他の作品でも被ってるときもあるし。だから実は、4人が揃うっていうのはそんなに珍しいことじゃないんだ。食事行くたびにSNSに写真載せるとか、お互いにあんまりしないから意外かもだけど。」
「…そ、そんなに仲が良いんですね。」
「割と同期とか、同期に近かったり、高校生とかのキャラクターが多い現場とかに選ばれやすい声だったりするからかな。1クールで誰にも会わないみたいなことって、スタカラ始まってからないと思う。」
「そんなに…!」

 そこまで聞いてから里依ははっとする。あまりにすらすら話してくれるからそのまま聞いてしまっていたが、里依が聞いていい話ではない。しかも無料でなんてだめに決まっている。ラジオで聞くならまだいい。直接聞いてしまっているのだ。

「す、すみません!ついそのまま聞いてしまっていましたが、あの、これラジオとか配信じゃないから…私が聞いちゃだめな話ですよね?」
「全然?ただの世間話だよ。あ、でも俺の話よりも里依さんの話を聞きたいなって思ってここに来たんだ。…いるかどうかは賭けだったけど。」
「わ、私の話は大丈夫です!他人の感想を読みながらライブのことを思い出しているくらいしか、やってることもありませんし。」

 里依がそう言うと、三澄がそれそれと言わんばかりに頷いて、好奇心に満ちた目で里依を見た。

「里依さんの感想を聞かせてほしい。印象的だった曲とか衣装とかあった?」
「ありますよ!そんなの、いっぱいあります!」
「全部聞きたい。教えて?」

 少し甘くなった声色は朋希の声とも言えるし、三澄の声とも言える絶妙なラインだった。そのせいで里依はうぐ…と口ごもってしまう。完全に三澄で来てくれれば大人だと突っぱねて、『だめです』と言えるのに、朋希のように聞こえてしまえば抗えない。年下の子にだめだめと言い続ける大人の自分が悪いようにすら思えてしまう。
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