ファンは恋をしないのです
「…あの、こんなこと言ったら失礼かもしれないんですけど、今までスモハニのことって満遍なく見ていて、特にこの子に注目して、みたいなことはなかったんです。」
「うん。」

 三澄がジョッキをもって、一口飲んだ。里依は言葉を続ける。

「でも今回はなんか目が自然と朋希くんを追いかけちゃって。リーダーとして頑張って背伸びしているところも、みんなをまとめようとしているところも、そういうところはトークのところで垣間見えましたけど、そういうのも新鮮でした。今までちゃんと意識してなかったところをよく見たというか。今回の曲が朋希くんがセンターの曲が選ばれてたので、フルで聴けたのも嬉しかったです。」
「やっぱり可愛いなって思いました?」
「うーん…。」

 里依はじっくりと思い返す。確かに登場シーンは可愛かった。そもそも『可愛い』『チームワーク』をテーマにしたユニットだ。

「確かに可愛かったんですけど、他3人に比べて朋希くんって少しだけ背が高いですし、ちょっときゅんとくる動作してることが多いなってことに気付いちゃって…。」

 里依は残っていたカシスオレンジを飲み干した。

「…ちゃんと男の子なんだなって。あ、あの、変な言い方になっちゃいましたけど、男の子だってわかってますけど、可愛い、女の子みたいな男の子なんじゃなくて、…えっと、上手く言えないな…どうしたら…。」
「高校生らしい男の子から、ちょっとかっこいい男の人になろうとしてる途中。今の朋希くんを演じるときは、すこーしだけそういうことを意識してる。特にこれは誰かに言われたとかじゃなくて、自分でそう思ってそうしてるってくらいなもので、公式見解ではないけど…。」
「あっ、やっぱりそうなんですね!私はそこまで上手くまとまった言葉では言えませんでしたけど、近い感じで思ってたことは大体合ってるんだ…。」

 独り言のように呟く里依を見て、三澄は微笑みながら口を開いた。

「うん。大体合ってる、というかそういう朋希くんの変化をくみ取ってもらえて嬉しい。」

 三澄の笑顔がダイレクトにアタックしてくる。フラッシュバックしたのは、今でも鮮明に思い出せるあのステージ上の三澄だ。ここはステージではないただの居酒屋なのに、三澄がこんなにキラキラして見えるなんておかしいし、直視できなくて困る。
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