ファンは恋をしないのです
「きっ…キラキラなんてしてないです!三澄さんじゃないんですから!」
「いやー!目がキラキラだったよ!具体例挙げて、力説してました!」
「力説はしましたが、キラキラはしてません!」
「里依さんからは自分の目なんて見えないでしょう?」
「それはそうですけど!」
「あの日の僕は、里依さんにはキラキラに見えていたんじゃないですか?」
「キラキラですよ!当たり前じゃないですか!」
「それと同じです。僕には好きなものを語る里依さんが輝いて見えた。…言葉一つ一つが、本当に嬉しかった。あの日もだけど、再会して話してくれた時もそう。緊張していたのはわかったけど、それでも一生懸命話してくれるのが、嬉しかった。」

 再び優しく微笑む三澄に、また頬の温度が上がった気がする。こんなに気の抜けた表情を、里依は知らない。知らない表情を知っていい人では、自分は絶対にないのに、それでも。

(うぅ…だめだ、嬉しいって思っちゃう。かっこいいとも、可愛いとも思ってしまう。強すぎる…三澄さん。)

 ただでさえときめいていたライブの余韻がずっと里依の中にあるのに、こうやって熱を冷ますつもりがないとでも言うように追い打ちをかけてくる。三澄の視線は、里依の方に向いたままだ。たまらなくなって、里依は再び俯いた。

「里依…さん?」
「…すみません、あの…本当にオタク冥利に尽きるお言葉をいただいてしまって、恐縮です。…でもあの、ちょっと待ってもらってもいいですか、今、あの本当に…顔、上げられなくて。」
「お酒、酔っちゃった?」
「…酔ってないのに、…ほっぺが熱いので…多分赤くなってると思うし…すみません、ちょっと待ってください。三澄さんの言葉が、嬉しくて…あの、…その、照れて…しまって。すみません、本当に。」

 照れたのは、嬉しかったからだけじゃない。だが、さすがに本当のことは言えないため、里依はそっと静かに心を隠した。隠した気持ちに三澄が気付かず、これ以上深入りせず、下がってくれたらいい。それを寂しいだとか、残念だとか思う立場に自分はいないのだから。
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