ファンは恋をしないのです
「え…?」
不意に触れた、冷たい手。その冷たさと、慣れない感触に驚いて顔を上げると、その手が間違いなく三澄のものだったことがわかってしまった。
「…ほんとに赤い。ずっと可愛いね、里依さん。」
「か…かわっ…!?」
里依は両頬を両手で押さえてテーブルを見つめる。三澄の方が見れない。
「相手が二階堂だったらジョッキごとピタってやるけど、さすがにほっぺにジョッキいきなりつけられたらびっくりするでしょう?だから手を冷やしてみました。」
「手、冷やしちゃだめです!台本めくったり、書き込んだりする大事な手ですよ!」
三澄の方を向けないまま、里依は言葉を口にした。
「里依さん、ずっとそのまま喋るつもりですか?」
「み、三澄さんが変なこと言うから、三澄さんの方を向けなくなりました。」
赤いことも熱いことも、確認しなくたってわかる。
「…変なことは言ってないよ。思ったことを言っただけ。」
「…失礼を承知でお尋ねします。あの三澄さんは…。」
「はい。」
「誰にでもその…そのような感じ…なんですか?」
「そのような感じ、とは?」
「えっと…可愛いって言ったり、思ったことをそのまま言っただけって言ったり…。」
「あっ、もしかしてチャラいって思ってますか?」
「……。」
沈黙は肯定だ。視線も戻せないまま、里依は俯いた。
「誰にでもじゃないです。というか、誰かに可愛いなんて本当に久しぶりに言いました。」
「…言われ慣れてなくて、照れてしまってすみません、本当に。」
「謝られるようなことじゃないです。さ、いっぱい食べて飲みましょう?」
重くなりかけた空気がふわっと軽くなる。三澄の声は不思議だ。少年の声でもあるのに(むしろ里依がよく聞いているのは主にこの声だ)今は本当にただの男の人の声で、里依がやっと視線を上げられるようになると、にっこりと微笑んでくれる。もうステージ上のアイドルと、その観客という関係ではないのに。
「里依さん?」
「…夢だと思っていました、この前のことは。それなのに今もこうして三澄さんと話している…。全然、夢じゃなかったみたいです。」
「最初からずっと、夢じゃないですよ。」
そう、夢じゃないのだ。嘘みたいな、本当のこと。さっき触れた三澄の手の感触があったことが、何よりの証明だ。
不意に触れた、冷たい手。その冷たさと、慣れない感触に驚いて顔を上げると、その手が間違いなく三澄のものだったことがわかってしまった。
「…ほんとに赤い。ずっと可愛いね、里依さん。」
「か…かわっ…!?」
里依は両頬を両手で押さえてテーブルを見つめる。三澄の方が見れない。
「相手が二階堂だったらジョッキごとピタってやるけど、さすがにほっぺにジョッキいきなりつけられたらびっくりするでしょう?だから手を冷やしてみました。」
「手、冷やしちゃだめです!台本めくったり、書き込んだりする大事な手ですよ!」
三澄の方を向けないまま、里依は言葉を口にした。
「里依さん、ずっとそのまま喋るつもりですか?」
「み、三澄さんが変なこと言うから、三澄さんの方を向けなくなりました。」
赤いことも熱いことも、確認しなくたってわかる。
「…変なことは言ってないよ。思ったことを言っただけ。」
「…失礼を承知でお尋ねします。あの三澄さんは…。」
「はい。」
「誰にでもその…そのような感じ…なんですか?」
「そのような感じ、とは?」
「えっと…可愛いって言ったり、思ったことをそのまま言っただけって言ったり…。」
「あっ、もしかしてチャラいって思ってますか?」
「……。」
沈黙は肯定だ。視線も戻せないまま、里依は俯いた。
「誰にでもじゃないです。というか、誰かに可愛いなんて本当に久しぶりに言いました。」
「…言われ慣れてなくて、照れてしまってすみません、本当に。」
「謝られるようなことじゃないです。さ、いっぱい食べて飲みましょう?」
重くなりかけた空気がふわっと軽くなる。三澄の声は不思議だ。少年の声でもあるのに(むしろ里依がよく聞いているのは主にこの声だ)今は本当にただの男の人の声で、里依がやっと視線を上げられるようになると、にっこりと微笑んでくれる。もうステージ上のアイドルと、その観客という関係ではないのに。
「里依さん?」
「…夢だと思っていました、この前のことは。それなのに今もこうして三澄さんと話している…。全然、夢じゃなかったみたいです。」
「最初からずっと、夢じゃないですよ。」
そう、夢じゃないのだ。嘘みたいな、本当のこと。さっき触れた三澄の手の感触があったことが、何よりの証明だ。