ファンは恋をしないのです
5.折衷案は配信で
* * *
里依は春風がやや冷たく感じる4月のとある日に、頭を抱えながら悶々と人気のあまりない公園の前で立ち止まった。
(…どうしてこんなことに。)
里依のスマートフォンが震える。確認すると、絶対に連絡をもらってはいけない相手からだった。
『里依さん、迷ってないですか?』
「はぁああ…。」
三澄と一対一で再会してしまったあの日、『仲良くなりたい』と言った三澄の提案はスタカラのCGライブの別の地方公演に一緒に行かないかというものだった。あの日のことを思い出すと、ますます頭が痛くなる。
「絶対だめです!というか現地のチケットはもう全部売り切れですし…。」
「だから、ライブビューイング。」
「…ライビュ…ってだめに決まってます!絶対バレます!」
「みんな推しに夢中じゃないのかな?」
「それはそうなんですけど、でもバレます。みんながみんな、三澄さんの顔知ってるんですよ?それに横にいる女誰よってなりますから!」
「…そっかぁ。里依さんと見たかったんだけど。」
「あの、そもそも…いいですか?」
「はい。」
「…あの、私と仲良くなるっていうのが、そもそもだめです。」
「どうして?」
本当にわからないみたいな顔をして問わないでほしい。しかも少し可愛いのがよくない。
「三澄さんは声優さんです。私は一般的なオタク。ファンの側の人間です。いいですか、ファンとは仲良くなっちゃだめなんです。」
「…でも僕はファンじゃなくて、里依さんと仲良くなりたいんだけど?」
まっすぐすぎる言葉に耐えきれなくなって触れた頬も耳も熱くて、里依の言葉は封じられた。
「相手がファンなのかそうじゃないのかは二の次で、僕も人間だから誰かを好きになる。里依さんだってそうでしょう?」
「それはっ…そうかも、しれないですけど。」
三澄が正しい。ファンは声優に恋をしてはいけない、…とは思う。だけど、声優が恋をしてはいけないなんて、そんなことは里依が決めていいことじゃない。
「里依さん。いきなり好きになってほしいとも、好きだとも言うつもりも、どっちもないですよ。ただ、里依さんのことが知りたい。そのために、一緒に過ごす時間が欲しいんです。もちろん、里依さんが嫌じゃないならです。」
その言い方は、里依にはひどくずるいものに聞こえてしまった。嫌なのではなく『だめ』なのだと思っている気持ちは嘘ではない。嫌ではないから、三澄の今の言葉を突っぱねることができなかった。
里依は春風がやや冷たく感じる4月のとある日に、頭を抱えながら悶々と人気のあまりない公園の前で立ち止まった。
(…どうしてこんなことに。)
里依のスマートフォンが震える。確認すると、絶対に連絡をもらってはいけない相手からだった。
『里依さん、迷ってないですか?』
「はぁああ…。」
三澄と一対一で再会してしまったあの日、『仲良くなりたい』と言った三澄の提案はスタカラのCGライブの別の地方公演に一緒に行かないかというものだった。あの日のことを思い出すと、ますます頭が痛くなる。
「絶対だめです!というか現地のチケットはもう全部売り切れですし…。」
「だから、ライブビューイング。」
「…ライビュ…ってだめに決まってます!絶対バレます!」
「みんな推しに夢中じゃないのかな?」
「それはそうなんですけど、でもバレます。みんながみんな、三澄さんの顔知ってるんですよ?それに横にいる女誰よってなりますから!」
「…そっかぁ。里依さんと見たかったんだけど。」
「あの、そもそも…いいですか?」
「はい。」
「…あの、私と仲良くなるっていうのが、そもそもだめです。」
「どうして?」
本当にわからないみたいな顔をして問わないでほしい。しかも少し可愛いのがよくない。
「三澄さんは声優さんです。私は一般的なオタク。ファンの側の人間です。いいですか、ファンとは仲良くなっちゃだめなんです。」
「…でも僕はファンじゃなくて、里依さんと仲良くなりたいんだけど?」
まっすぐすぎる言葉に耐えきれなくなって触れた頬も耳も熱くて、里依の言葉は封じられた。
「相手がファンなのかそうじゃないのかは二の次で、僕も人間だから誰かを好きになる。里依さんだってそうでしょう?」
「それはっ…そうかも、しれないですけど。」
三澄が正しい。ファンは声優に恋をしてはいけない、…とは思う。だけど、声優が恋をしてはいけないなんて、そんなことは里依が決めていいことじゃない。
「里依さん。いきなり好きになってほしいとも、好きだとも言うつもりも、どっちもないですよ。ただ、里依さんのことが知りたい。そのために、一緒に過ごす時間が欲しいんです。もちろん、里依さんが嫌じゃないならです。」
その言い方は、里依にはひどくずるいものに聞こえてしまった。嫌なのではなく『だめ』なのだと思っている気持ちは嘘ではない。嫌ではないから、三澄の今の言葉を突っぱねることができなかった。