ファンは恋をしないのです
『あと5分くらいで着くと思います。』
『わかりました。鍵を開けておくので、入ってきちゃってください。』
(チャイムも鳴らせないなんて…でもきょろきょろしてもよくないし。)
里依はマンションの1階の共用のドアのロックを解除する番号を入力し、足早に三澄の部屋に向かう。言われた307号室のドアには目印として、『スモハニ』のロゴチャームキーホルダーがかかっていた。里依はそれをそっと外し、ドアノブをガチャリと回した。
「…お、お邪魔します。」
「待ってました!」
にっこり満面の笑みの三澄は、…可愛い。いや、可愛いと思ってはいけない相手だ。頭ではわかっている。頭でわかっていても心は正直だ。
「あの、三澄さん、シュークリームがお好きだと…。」
「えっ、はい!」
「私が好きなシュークリーム屋さんのシュークリームです。お口に合うといいんですが…。」
「嬉しいです。一緒に食べましょう。おやつの時間に丁度いいし。」
時計は15時を少し過ぎた頃を指している。配信は16時半スタートだったが、どんな準備をするのか見せてほしいと言われたので早めに来ることにしたのだ。
「里依さんは甘いものには何を合わせて飲みますか?」
「えっと、コーヒーでも紅茶でもあるものを合わせます。」
「どっちもありますよ。どっちがいい?」
三澄の両手には紅茶の入った缶らしきものと、コーヒースティック。
「では紅茶でお願いします。すみません、お気遣いいただいて。」
「いえいえ。シュークリームが嬉しいので、お茶くらい全然ですよ。ソファーにでも座ってゆっくりしてください。」
「…は、はい。」
里依は喉をごくりと鳴らした。ついに入ってしまう。ファンが立ち入ってはいけない領域に。その覚悟で来たはずなのに、頭の中ではだめだという声が鳴り続ける。
「りーいさん?」
なかなか進まない里依のところに、ケトルの電源を入れてから三澄がやってきた。そして、里依の手をすっと引く。
「み、三澄さん!?」
「今日はファンの作法をたくさん教えてもらいたいし、里依さんがどういう風に楽しんでいるのかも見たいし、やりたいことがたくさんあるんです。だから、そんなところにいてもらっちゃ困りますよ。」
三澄に手を引かれて、里依はリビングに通される。ソファーの前まで連れてこられてしまったら、里依には座るほかなかった。
『わかりました。鍵を開けておくので、入ってきちゃってください。』
(チャイムも鳴らせないなんて…でもきょろきょろしてもよくないし。)
里依はマンションの1階の共用のドアのロックを解除する番号を入力し、足早に三澄の部屋に向かう。言われた307号室のドアには目印として、『スモハニ』のロゴチャームキーホルダーがかかっていた。里依はそれをそっと外し、ドアノブをガチャリと回した。
「…お、お邪魔します。」
「待ってました!」
にっこり満面の笑みの三澄は、…可愛い。いや、可愛いと思ってはいけない相手だ。頭ではわかっている。頭でわかっていても心は正直だ。
「あの、三澄さん、シュークリームがお好きだと…。」
「えっ、はい!」
「私が好きなシュークリーム屋さんのシュークリームです。お口に合うといいんですが…。」
「嬉しいです。一緒に食べましょう。おやつの時間に丁度いいし。」
時計は15時を少し過ぎた頃を指している。配信は16時半スタートだったが、どんな準備をするのか見せてほしいと言われたので早めに来ることにしたのだ。
「里依さんは甘いものには何を合わせて飲みますか?」
「えっと、コーヒーでも紅茶でもあるものを合わせます。」
「どっちもありますよ。どっちがいい?」
三澄の両手には紅茶の入った缶らしきものと、コーヒースティック。
「では紅茶でお願いします。すみません、お気遣いいただいて。」
「いえいえ。シュークリームが嬉しいので、お茶くらい全然ですよ。ソファーにでも座ってゆっくりしてください。」
「…は、はい。」
里依は喉をごくりと鳴らした。ついに入ってしまう。ファンが立ち入ってはいけない領域に。その覚悟で来たはずなのに、頭の中ではだめだという声が鳴り続ける。
「りーいさん?」
なかなか進まない里依のところに、ケトルの電源を入れてから三澄がやってきた。そして、里依の手をすっと引く。
「み、三澄さん!?」
「今日はファンの作法をたくさん教えてもらいたいし、里依さんがどういう風に楽しんでいるのかも見たいし、やりたいことがたくさんあるんです。だから、そんなところにいてもらっちゃ困りますよ。」
三澄に手を引かれて、里依はリビングに通される。ソファーの前まで連れてこられてしまったら、里依には座るほかなかった。