ファンは恋をしないのです
三澄の真っ直ぐな言葉と柔らかな、普段聞いている『朋希』の声とは違う声が、里依の耳を揺らす。基本は敬語なのに、ふとしたときにこぼれるくだけた言葉遣いにドキッとして、『僕』と言う人なのだと思っていたら『俺』とも言われて、やはり『キャラクター』ではないのだということをより一層感じさせられる。
「…三澄さんが、嬉しいなら…いいです。気分を害したとかでなければ…はい。」
言葉尻がどんどん小さくなってしまう。しかし、そんな里依の様子を見た三澄はさらに笑みを深くした。
「ずっと楽しいです。」
「ほ、本番はこれからですよ!」
「それもそっか。」
「あの…私は敬語を崩せませんが、三澄さんは私なんかに気を遣わずにお好きな口調で大丈夫ですからね?」
「あ、ほんと?じゃあこのくらいの感じでもいい?」
「はい!もちろんです!」
「里依さんも、話しやすい口調でいいよ?」
「私は敬語が一番話しやすいです、今のところ。…あの、本当にちゃんと、それなりには緊張しているので。」
「緊張感、出してる?」
「い、いえっ!私が勝手に緊張してるだけです、本当にすみません!」
先ほどグッズを取り出して並べていたときにはあまり感じなかった緊張感が、今は少しある。それは多分、ぐっと距離が近付いたからだ。ほのかに香る、自分じゃない匂い。それをキャッチできるくらいには近い距離にいるということを自覚して、緊張が増してしまう。
「ううん。そりゃ知らない人だし、緊張するよね。だから、ゆっくり緊張を解いてもらえるように頑張るね。まずは楽しい時間の共有から!」
里依を見て微笑んだ三澄の視線が、ゆっくりとテレビ画面に移っていく。自分から視線が外れてようやく、体から緊張が溶けだしていく気がする。里依は小さく深呼吸をした。会場の音が耳に入ってくる。いつもと違うアレンジがされた曲が、里依を『スタカラ』の世界に引っ張っていってくれる。いつもの場所なら、いつもの自分になれる、…と信じたい。たとえ、隣に三澄がいようとも。
ぴたりと音楽が止んだ。これは始まりの合図。
「部屋、電気消す?」
「お願いします!」
パチッと、部屋の電気が消える。テレビの画面には色とりどりの光が集まっている。始まる直前のこのワクワク感は、何度体験しても好きだ。里依はペンライトを胸の前できゅっと握った。
「…三澄さんが、嬉しいなら…いいです。気分を害したとかでなければ…はい。」
言葉尻がどんどん小さくなってしまう。しかし、そんな里依の様子を見た三澄はさらに笑みを深くした。
「ずっと楽しいです。」
「ほ、本番はこれからですよ!」
「それもそっか。」
「あの…私は敬語を崩せませんが、三澄さんは私なんかに気を遣わずにお好きな口調で大丈夫ですからね?」
「あ、ほんと?じゃあこのくらいの感じでもいい?」
「はい!もちろんです!」
「里依さんも、話しやすい口調でいいよ?」
「私は敬語が一番話しやすいです、今のところ。…あの、本当にちゃんと、それなりには緊張しているので。」
「緊張感、出してる?」
「い、いえっ!私が勝手に緊張してるだけです、本当にすみません!」
先ほどグッズを取り出して並べていたときにはあまり感じなかった緊張感が、今は少しある。それは多分、ぐっと距離が近付いたからだ。ほのかに香る、自分じゃない匂い。それをキャッチできるくらいには近い距離にいるということを自覚して、緊張が増してしまう。
「ううん。そりゃ知らない人だし、緊張するよね。だから、ゆっくり緊張を解いてもらえるように頑張るね。まずは楽しい時間の共有から!」
里依を見て微笑んだ三澄の視線が、ゆっくりとテレビ画面に移っていく。自分から視線が外れてようやく、体から緊張が溶けだしていく気がする。里依は小さく深呼吸をした。会場の音が耳に入ってくる。いつもと違うアレンジがされた曲が、里依を『スタカラ』の世界に引っ張っていってくれる。いつもの場所なら、いつもの自分になれる、…と信じたい。たとえ、隣に三澄がいようとも。
ぴたりと音楽が止んだ。これは始まりの合図。
「部屋、電気消す?」
「お願いします!」
パチッと、部屋の電気が消える。テレビの画面には色とりどりの光が集まっている。始まる直前のこのワクワク感は、何度体験しても好きだ。里依はペンライトを胸の前できゅっと握った。