ファンは恋をしないのです
始まってしまえば、始まる前にあった『三澄がぶつかるかもしれないくらい近くにいる』という緊張感はなくなって、画面にしか集中できなくなった。ペンライトは控えめに振りつつ、どちらかといえばダンスやファンサービスの動き、曲のアレンジなどに神経がいってしまう。
(ずっと目がキラキラしてる。…たまに口が開きっぱなしでかわいい。)
ライブが始まって40分くらいが過ぎても、里依は一度も三澄の方をみることはなかった。それをいいことに、三澄といえば里依の方に視線を向けていた。その目は里依とライブを行ったり来たりする。
「今のダンス!」
「え?」
「三澄さんもライブでやってましたよね!」
緊張していた里依はもういなくなっていた。にこにこの笑顔で三澄の方を向いた。
「朋希くんなのに、三澄さんが踊ってるみたいにも見えます。」
そう言って、里依の笑顔はまた画面の方に向けられる。一瞬のことすぎて、三澄はといえばあっけにとられるばかりだった。
(今の…何…?そんないきなりこっち向くとか…。)
想定外の里依の動きに、三澄は口元を覆った。今の笑顔は、これがライブならではというやつなのかと納得できるくらいのレベルに思えた。里依はきっと、あの日のライブでもこんな顔をしていたに違いない。
(…見えていたたくさんのお客さんの中に、いたんだよなぁ。)
景色を全体としては覚えている。しかしさすがにその細部まで人の顔を認識して覚えるほどの瞬間記憶能力はない。勿体ないことをした、と思ってしまう。こんな表情で、目で、追いかけてあの日のライブを観てくれていた里依を自分の視界は映していたはずなのに、記憶としては残っていない、なんて。
ずっと嬉しそうな、夢見るような、そして時折食い入るように画面に見入っている里依を見つめながら、三澄は口惜しいことをしたと思う気持ちを拭えないでいた。
(…だって可愛すぎたもんなぁ、さっきの。)
(ずっと目がキラキラしてる。…たまに口が開きっぱなしでかわいい。)
ライブが始まって40分くらいが過ぎても、里依は一度も三澄の方をみることはなかった。それをいいことに、三澄といえば里依の方に視線を向けていた。その目は里依とライブを行ったり来たりする。
「今のダンス!」
「え?」
「三澄さんもライブでやってましたよね!」
緊張していた里依はもういなくなっていた。にこにこの笑顔で三澄の方を向いた。
「朋希くんなのに、三澄さんが踊ってるみたいにも見えます。」
そう言って、里依の笑顔はまた画面の方に向けられる。一瞬のことすぎて、三澄はといえばあっけにとられるばかりだった。
(今の…何…?そんないきなりこっち向くとか…。)
想定外の里依の動きに、三澄は口元を覆った。今の笑顔は、これがライブならではというやつなのかと納得できるくらいのレベルに思えた。里依はきっと、あの日のライブでもこんな顔をしていたに違いない。
(…見えていたたくさんのお客さんの中に、いたんだよなぁ。)
景色を全体としては覚えている。しかしさすがにその細部まで人の顔を認識して覚えるほどの瞬間記憶能力はない。勿体ないことをした、と思ってしまう。こんな表情で、目で、追いかけてあの日のライブを観てくれていた里依を自分の視界は映していたはずなのに、記憶としては残っていない、なんて。
ずっと嬉しそうな、夢見るような、そして時折食い入るように画面に見入っている里依を見つめながら、三澄は口惜しいことをしたと思う気持ちを拭えないでいた。
(…だって可愛すぎたもんなぁ、さっきの。)