ファンは恋をしないのです
しばらく激しい雨が窓にぶつかる音だけが室内に響いた。
「里依さん」
「は、はい…!」
カーペットの上にあぐらをかいて座る三澄は、握っていた里依の手をゆっくり放した。温かさが遠ざかって行ってまた少し不安が戻ってくる。しかし、それは悟られてはいけない感情だ。里依は唇に少しだけ力を入れた。
「両手を貸してもらえる?」
「両手…ですか?」
「うん。」
三澄の両手は掌が見えるように里依の前に差し出されている。里依は意外と大きくて、ごつごつしたその手に少しだけ両手を乗せた。
「…こう、ですか?」
「ありがとう。…やっぱり両手、冷たいね。寒い?」
「あっ、いえ…寒くはないんですけど…すみません…。冷え性なのもあって、手はいつもあんまり温かくはなくて…。今日は多分、メンタルの問題で冷たい、です…。」
「そっか。あ、じゃあ雨とか雷とかの音が気にならないように、好きな音楽でも流す?スマホの充電はまだある?」
「あ、あります!」
「俺もある。あ、でもスマホで流したらバッテリー食っちゃうかな?」
「そう…ですね。モバイルバッテリーは一応持ってます。スピーカーは持ってない、です。あ、あとはイヤホンなら…。」
三澄の手の上に置いていた手は元の位置に戻した。振り返ってカバンを覗く。スマホはすぐに見つかり、ライトをつけて中を見る。リズムゲームそこそこユーザーの里依にとって、イヤホンは必需品だ。いつものポーチを見つけると、ふとその軽さに疑問が浮かぶ。
「あれ…?」
「なかった?」
「…あの、すみません。てっきりBluetooth対応のイヤホンを持ってると思ってたんですけど…有線しかなくて。」
「有線わけっこしてくれる?」
「えっ?」
「里依さんが左耳で、俺に右耳貸してもらえたら一緒に聞けるよね?」
「っ…あ、えっ…それはそう、ですけど…距離が近い…ことになっちゃって…。」
「里依さんが絶対嫌ならやめよ。でも、俺に遠慮してるとかだったら貸してほしいな。結構前だけど漫画の一部にボイスを入れるっていう企画で少し前の漫画作品で似たようなシーン演じてて、やってみたいなーって思ってたんだ。」
「…肩、絶対ぶつかっちゃいます。」
「いいよ。いつ電気復旧するかわかんないし、モバイルバッテリーの無駄遣いはよくない。…ってことにして、一緒に聞こうよ。里依さんの好きな曲、教えて?」
この声に、この表情に、里依はとことん弱い。ファンとして、適切な行動をとると固く誓ってここに来たはずなのに。
「里依さん」
「は、はい…!」
カーペットの上にあぐらをかいて座る三澄は、握っていた里依の手をゆっくり放した。温かさが遠ざかって行ってまた少し不安が戻ってくる。しかし、それは悟られてはいけない感情だ。里依は唇に少しだけ力を入れた。
「両手を貸してもらえる?」
「両手…ですか?」
「うん。」
三澄の両手は掌が見えるように里依の前に差し出されている。里依は意外と大きくて、ごつごつしたその手に少しだけ両手を乗せた。
「…こう、ですか?」
「ありがとう。…やっぱり両手、冷たいね。寒い?」
「あっ、いえ…寒くはないんですけど…すみません…。冷え性なのもあって、手はいつもあんまり温かくはなくて…。今日は多分、メンタルの問題で冷たい、です…。」
「そっか。あ、じゃあ雨とか雷とかの音が気にならないように、好きな音楽でも流す?スマホの充電はまだある?」
「あ、あります!」
「俺もある。あ、でもスマホで流したらバッテリー食っちゃうかな?」
「そう…ですね。モバイルバッテリーは一応持ってます。スピーカーは持ってない、です。あ、あとはイヤホンなら…。」
三澄の手の上に置いていた手は元の位置に戻した。振り返ってカバンを覗く。スマホはすぐに見つかり、ライトをつけて中を見る。リズムゲームそこそこユーザーの里依にとって、イヤホンは必需品だ。いつものポーチを見つけると、ふとその軽さに疑問が浮かぶ。
「あれ…?」
「なかった?」
「…あの、すみません。てっきりBluetooth対応のイヤホンを持ってると思ってたんですけど…有線しかなくて。」
「有線わけっこしてくれる?」
「えっ?」
「里依さんが左耳で、俺に右耳貸してもらえたら一緒に聞けるよね?」
「っ…あ、えっ…それはそう、ですけど…距離が近い…ことになっちゃって…。」
「里依さんが絶対嫌ならやめよ。でも、俺に遠慮してるとかだったら貸してほしいな。結構前だけど漫画の一部にボイスを入れるっていう企画で少し前の漫画作品で似たようなシーン演じてて、やってみたいなーって思ってたんだ。」
「…肩、絶対ぶつかっちゃいます。」
「いいよ。いつ電気復旧するかわかんないし、モバイルバッテリーの無駄遣いはよくない。…ってことにして、一緒に聞こうよ。里依さんの好きな曲、教えて?」
この声に、この表情に、里依はとことん弱い。ファンとして、適切な行動をとると固く誓ってここに来たはずなのに。