ファンは恋をしないのです
里依は自分のスマホにイヤホンを挿し込んだ。片耳を三澄に渡す。三澄は笑顔で受け取って、自分の耳に入れた。そしてすっと里依のすぐ隣に座った。里依も意を決してスマホに向き合った。三澄の方を自分から向くのはどうやらもうこれ以降は無理そうだ。
いつも使っているアプリを起動し、お気に入りのプレイリストを開ける。色々なジャンルの曲をこのプレイリストに入れているので、そこから三澄の知っていそうな曲をピックアップする。…1曲目は、これがいい。選んだその曲をタップする。
三澄がふふ、と小さく笑った。その声につられて三澄の方を向きそうになるが、ぐっと我慢する。この距離で三澄に泣きはらした顔を見せるわけにはいかない。
「俺もこの曲、大好き。」
「…良かった…っ!?」
せっかく心が少しずつ安心を取り戻していたのに、雷の大きな音にその安心がすぐ吹き飛んでしまう。里依の体のびくつきを感じた三澄は、里依に触れていた右腕をそっと、里依の右肩の方に伸ばす。里依の右耳が温かい手に包まれる。
「え…?」
「俺が借りちゃったから片耳空いてて怖いよね?耳栓の代わり。」
ぐっと引き寄せられるわけでもなく、ただ里依の耳を雷の音から隠してくれる。恥ずかしさと緊張で、急激に顔に熱が集まってきた気がする。
「ん?なんか、顔熱くなった?熱?」
「あ、あ、熱くもなりますよ!集中して聴いてたのに…。」
三澄の方を向けないまま、里依は熱い顔のまま答えた。暗くて顔の赤さまではばれないだろうことが、今の状況での唯一の救いだ。
「1曲目はフォーカクが来るかなって思ってた。」
「フォーカクの曲は確かに気分が上がるものが多くて好きですが、…今はこの曲の方が安心できます。あと、思い出の曲でもあるので。」
「思い出?」
「はい。…あの日のライブで三澄さんがキラキラしていた思い出、です。元々好きな曲だったけど、あのライブをきっかけにもっと聴くようになりました。一緒に一歩を踏み出して、手を繋いでゆっくり歩いていこうって、歌詞の中でそう言ってくれるから、好きです。ちょっと気持ちが落ち込んだときとか、また頑張ろうって思えるので。」
里依は自然と笑顔になった。瞼を閉じると鮮明に思い出せるあの日の光景。可愛くて、かっこよくて、あまりにも『朋希』だった三澄。その三澄が今隣にいる。嘘みたいな話なのに、耳に伝わる温さは本物なのだから困る。嘘じゃないとわかってしまう。
いつも使っているアプリを起動し、お気に入りのプレイリストを開ける。色々なジャンルの曲をこのプレイリストに入れているので、そこから三澄の知っていそうな曲をピックアップする。…1曲目は、これがいい。選んだその曲をタップする。
三澄がふふ、と小さく笑った。その声につられて三澄の方を向きそうになるが、ぐっと我慢する。この距離で三澄に泣きはらした顔を見せるわけにはいかない。
「俺もこの曲、大好き。」
「…良かった…っ!?」
せっかく心が少しずつ安心を取り戻していたのに、雷の大きな音にその安心がすぐ吹き飛んでしまう。里依の体のびくつきを感じた三澄は、里依に触れていた右腕をそっと、里依の右肩の方に伸ばす。里依の右耳が温かい手に包まれる。
「え…?」
「俺が借りちゃったから片耳空いてて怖いよね?耳栓の代わり。」
ぐっと引き寄せられるわけでもなく、ただ里依の耳を雷の音から隠してくれる。恥ずかしさと緊張で、急激に顔に熱が集まってきた気がする。
「ん?なんか、顔熱くなった?熱?」
「あ、あ、熱くもなりますよ!集中して聴いてたのに…。」
三澄の方を向けないまま、里依は熱い顔のまま答えた。暗くて顔の赤さまではばれないだろうことが、今の状況での唯一の救いだ。
「1曲目はフォーカクが来るかなって思ってた。」
「フォーカクの曲は確かに気分が上がるものが多くて好きですが、…今はこの曲の方が安心できます。あと、思い出の曲でもあるので。」
「思い出?」
「はい。…あの日のライブで三澄さんがキラキラしていた思い出、です。元々好きな曲だったけど、あのライブをきっかけにもっと聴くようになりました。一緒に一歩を踏み出して、手を繋いでゆっくり歩いていこうって、歌詞の中でそう言ってくれるから、好きです。ちょっと気持ちが落ち込んだときとか、また頑張ろうって思えるので。」
里依は自然と笑顔になった。瞼を閉じると鮮明に思い出せるあの日の光景。可愛くて、かっこよくて、あまりにも『朋希』だった三澄。その三澄が今隣にいる。嘘みたいな話なのに、耳に伝わる温さは本物なのだから困る。嘘じゃないとわかってしまう。