ファンは恋をしないのです
* * *
しばらくぽつりぽつりと話しながら曲を聞き続けた。少しずつ雷は遠ざかり、雨音だけになった。しかし停電が直る気配はない。三澄は里依の耳から手をそっと離し、スマホを持った。停電の状況を調べるためだった。
「里依さん。」
「はいっ!」
「…えっと、これ、見てもらってもいい?」
「は、はい。」
里依の目が、文字を追いながら左右に動いていく。そして下に向かえば向かうほど、「う…」「え…」「あ…」という虚しい声が落ちていく。
「あの…。」
「大規模停電で、復旧の目途が立っていない。周辺の電車も動いてないし、信号もちゃんとつかないからバスも運休。そしてこの雨。…里依さん、家に帰れないと思う…。」
「…で、ですよね…総合的に判断するとそうなります…けど、でも泊めていただくわけには…絶対にダメです。三澄さんにこれ以上の迷惑はかけられません…!」
たとえずぶ濡れになっても、帰る部屋が真っ暗でも帰らなくてはならない。怜花の家なら泊めてもらえるが、三澄の家は絶対にだめだ。今日はタブーを犯しすぎている。
「…って言うと思ってたけど、心配で帰せないよ。それこそ、家まで送るってところまでさせてもらえないなら、家から出せないです。里依さんに怪我も怖い思いもしてほしくないので。」
「こ、怖いのは寝て何とかします!雷はなくなったので、怖さは半減しています!」
「怪我しないとは言い切れないよね?あと、こんな雨の中長時間歩いたら風邪ひくかもしれないよね?」
「…体丈夫なので風邪はめったにひきません。」
「気温、今日低いみたい、ほら。」
見せられた天気予報のニュースでは、確かに4月にしては低い気温が示されていた。室内も夕方からエアコンをつけていたが、言われてみれば少しずつ寒くなっているような気がする。落雷や三澄の接近で色々とそれどころではなく、勝手に発熱していたから気付かなかったのかもしれない。
「…誓って、絶対に、里依さんの身の安全を守ります。知らない男の家だもん、警戒するのは当然です。だから、距離を取れと言われたら取るし、とにかく里依さんが安心して一晩過ごせるようにしてほしいんだけど、それでもどうしても絶対に、だめ、かな?」
「…三澄さんにこれ以上迷惑を…かけられないです。」
「今日、一つも迷惑なんてかけられてないよ。だから、これ以上っていうところを訂正するね。あと、泊まってもらうのも全然迷惑じゃないよ。そこを一番に気にしてるなら、里依さんはただこの家で、安全に過ごしてくれればいいから。」
里依の方が無茶を言っているのはわかる。たとえば家が逆だったら、この雨の中三澄に帰れとは言わなかっただろう。
しばらくぽつりぽつりと話しながら曲を聞き続けた。少しずつ雷は遠ざかり、雨音だけになった。しかし停電が直る気配はない。三澄は里依の耳から手をそっと離し、スマホを持った。停電の状況を調べるためだった。
「里依さん。」
「はいっ!」
「…えっと、これ、見てもらってもいい?」
「は、はい。」
里依の目が、文字を追いながら左右に動いていく。そして下に向かえば向かうほど、「う…」「え…」「あ…」という虚しい声が落ちていく。
「あの…。」
「大規模停電で、復旧の目途が立っていない。周辺の電車も動いてないし、信号もちゃんとつかないからバスも運休。そしてこの雨。…里依さん、家に帰れないと思う…。」
「…で、ですよね…総合的に判断するとそうなります…けど、でも泊めていただくわけには…絶対にダメです。三澄さんにこれ以上の迷惑はかけられません…!」
たとえずぶ濡れになっても、帰る部屋が真っ暗でも帰らなくてはならない。怜花の家なら泊めてもらえるが、三澄の家は絶対にだめだ。今日はタブーを犯しすぎている。
「…って言うと思ってたけど、心配で帰せないよ。それこそ、家まで送るってところまでさせてもらえないなら、家から出せないです。里依さんに怪我も怖い思いもしてほしくないので。」
「こ、怖いのは寝て何とかします!雷はなくなったので、怖さは半減しています!」
「怪我しないとは言い切れないよね?あと、こんな雨の中長時間歩いたら風邪ひくかもしれないよね?」
「…体丈夫なので風邪はめったにひきません。」
「気温、今日低いみたい、ほら。」
見せられた天気予報のニュースでは、確かに4月にしては低い気温が示されていた。室内も夕方からエアコンをつけていたが、言われてみれば少しずつ寒くなっているような気がする。落雷や三澄の接近で色々とそれどころではなく、勝手に発熱していたから気付かなかったのかもしれない。
「…誓って、絶対に、里依さんの身の安全を守ります。知らない男の家だもん、警戒するのは当然です。だから、距離を取れと言われたら取るし、とにかく里依さんが安心して一晩過ごせるようにしてほしいんだけど、それでもどうしても絶対に、だめ、かな?」
「…三澄さんにこれ以上迷惑を…かけられないです。」
「今日、一つも迷惑なんてかけられてないよ。だから、これ以上っていうところを訂正するね。あと、泊まってもらうのも全然迷惑じゃないよ。そこを一番に気にしてるなら、里依さんはただこの家で、安全に過ごしてくれればいいから。」
里依の方が無茶を言っているのはわかる。たとえば家が逆だったら、この雨の中三澄に帰れとは言わなかっただろう。