ファンは恋をしないのです
「…本当に、いいんですか?」
「いいもなにも、ここにいてほしい。危険な目にあってほしくない。」

 真摯な三澄の言葉に、里依は静かに頷いた。

「…何から何までご配慮いただいて、ありがとうございます。本当に申し訳ないのですが、…お世話になります。」

 里依は深く頭を下げた。そんな姿に三澄は笑う。

「そんなにかしこまらなくていいのに。あ、というかお腹空いたよね?確か鍋とかやるときのガスコンロ買っておいたから、それで火が使えるかも。冷蔵庫にはなんかあったと思うし、何か適当に作って食べよっか。」
「あ、あの!私が作ってもいいですか?その…冷蔵庫を覗いてしまうのは申し訳ないのですが、タダで泊めていただくのも忍びないので…。」
「里依さんが作ってくれるの?」
「た、大したものは作れませんが…食べれるものは作れる…と思います。」
「里依さんの手料理食べれるの嬉しい!じゃあまずは腹ごしらえからだね。」

 片手にはスマホのライト、そして空いてる方の手は里依の手をすっと引く。

「キッチンこっちね。里依さんもスマホ持って。冷蔵庫の中、照らさないと多分何も見えないし。俺、ガスコンロ探すから、冷蔵庫適当にあさっていいよ?」
「…し、失礼します!」
「そんなに気合いれなくていいのに。」

 普段ならぱっと明かりがつく冷蔵庫が、当然ながら真っ暗だった。冷蔵庫の中を照らすと、どうやら自炊を全くしない人というわけはなさそうであるということがわかる。

「あの、長ネギにえのき、しめじ、お豆腐に鶏肉もあって何か作る予定でしたか?」
「あっ、そうか!忘れてた!キムチ鍋が突然食べたくなってやろうかなと思って買ってきてたんだった。余ったご飯とかも入ってるよね?」
「あります。」
「里依さん、辛い物平気?」
「大好きです。」
「じゃあキムチ鍋にしようか。卵もあるから、最後雑炊もやれるし、そしたら結構お腹いっぱいにならないかな?」
「なると思います。鍋ならすぐにできますし、じゃあ色々切っちゃいますね。キッチン、お借りします。」

 里依は袖をまくった。一晩泊めてもらうのだ。せめて三澄にお腹いっぱい食べてもらって、役に立たねばと気合を入れた。
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