ファンは恋をしないのです
* * *
(…まずい…非常に眠い…。)
食事を終え、片付けをし、三澄の服を借りて洗面所に向かい、メイク落としを借りてメイクを落とした。ガスコンロで沸かしたお湯を洗面器の半分くらいをもらい、借りたタオルの半分を浸す。少し冷まして火傷しない程度の温さになったタオルで全身を軽く拭いた。着替えの服も下着以外は三澄の私物であるし、タオルやメイク落とし、もらった歯ブラシなども全部本来は三澄だけが使うはずのものだった。仕方のない状況であると思う反面、やはり心の半分以上を占める申し訳なさがズキズキと音を立てる。たかが夕飯を少しやった程度では補えないくらいのものを与えてもらっている。
三澄の服の中で比較的小さい物や袖が短いものを用意してもらってもなお、ズボンの方は丈が余ってしまう。裾を引きずるのは申し訳ないが、裾を折っても歩くとずり落ちてしまうのでなるべく裾を踏まないように気をつけて歩くしかない。
三澄がいない空間に来て初めて、自分の疲労に気が付いた。瞼が重い。ギリギリのところでなんとか全てのことをこなし、リビングに戻る。洗面所を早く三澄に譲らなくてはならない。その前に使わせてもらったタオルは手洗いして干した方がいいのだろうか。やれることはやったほうがいいだろう、と判断して、里依はせっかく温まった手を冷たい水に晒してタオルを手洗いした。
「あの、タオルを干すところはありますか?」
「えっ、洗濯機に入れておいてもらえば今度やるよ?というか、水使ったらまた手、冷たくなっちゃわない?」
三澄がそっと、里依の手を包んだ。三澄の温かさに触れると、自分の手の冷たさを自覚した。
「あ、ほら!とりあえず里依さん、ベッド直行。…すっごい眠そうだし。」
「わ、私は床で…。」
「床なんかに寝かせられるわけないでしょ。里依さんはこっち。」
ぐいと手を引かれるが、里依は踏みとどまった。
「里依さん?」
「ま、まず三澄さんもお風呂…ではないですが、色々済ませてください。先に色々といただいちゃってすみません。私のことは大丈夫ですので。」
「でも、眠くない?」
「ね、眠くないです。三澄さんがゆっくりできないことの方が気がかりなので…。」
眠くないは嘘だが、三澄にゆっくりしてほしい気持ちは嘘じゃない。
「寒くない?」
「大丈夫、です。」
「じゃあ、里依さんもゆっくりしててね。」
「はい。」
三澄を見送って、里依はスマホで照らしながらソファを背にしてカーペットの上に座った。背もたれに体重を預けると、途端に瞼が落ちてくる。顔をブンブンと振ってみるものの、眠いものは眠かった。
(…まずい…非常に眠い…。)
食事を終え、片付けをし、三澄の服を借りて洗面所に向かい、メイク落としを借りてメイクを落とした。ガスコンロで沸かしたお湯を洗面器の半分くらいをもらい、借りたタオルの半分を浸す。少し冷まして火傷しない程度の温さになったタオルで全身を軽く拭いた。着替えの服も下着以外は三澄の私物であるし、タオルやメイク落とし、もらった歯ブラシなども全部本来は三澄だけが使うはずのものだった。仕方のない状況であると思う反面、やはり心の半分以上を占める申し訳なさがズキズキと音を立てる。たかが夕飯を少しやった程度では補えないくらいのものを与えてもらっている。
三澄の服の中で比較的小さい物や袖が短いものを用意してもらってもなお、ズボンの方は丈が余ってしまう。裾を引きずるのは申し訳ないが、裾を折っても歩くとずり落ちてしまうのでなるべく裾を踏まないように気をつけて歩くしかない。
三澄がいない空間に来て初めて、自分の疲労に気が付いた。瞼が重い。ギリギリのところでなんとか全てのことをこなし、リビングに戻る。洗面所を早く三澄に譲らなくてはならない。その前に使わせてもらったタオルは手洗いして干した方がいいのだろうか。やれることはやったほうがいいだろう、と判断して、里依はせっかく温まった手を冷たい水に晒してタオルを手洗いした。
「あの、タオルを干すところはありますか?」
「えっ、洗濯機に入れておいてもらえば今度やるよ?というか、水使ったらまた手、冷たくなっちゃわない?」
三澄がそっと、里依の手を包んだ。三澄の温かさに触れると、自分の手の冷たさを自覚した。
「あ、ほら!とりあえず里依さん、ベッド直行。…すっごい眠そうだし。」
「わ、私は床で…。」
「床なんかに寝かせられるわけないでしょ。里依さんはこっち。」
ぐいと手を引かれるが、里依は踏みとどまった。
「里依さん?」
「ま、まず三澄さんもお風呂…ではないですが、色々済ませてください。先に色々といただいちゃってすみません。私のことは大丈夫ですので。」
「でも、眠くない?」
「ね、眠くないです。三澄さんがゆっくりできないことの方が気がかりなので…。」
眠くないは嘘だが、三澄にゆっくりしてほしい気持ちは嘘じゃない。
「寒くない?」
「大丈夫、です。」
「じゃあ、里依さんもゆっくりしててね。」
「はい。」
三澄を見送って、里依はスマホで照らしながらソファを背にしてカーペットの上に座った。背もたれに体重を預けると、途端に瞼が落ちてくる。顔をブンブンと振ってみるものの、眠いものは眠かった。