ファンは恋をしないのです
* * *
「里依さん…?」
呼びかけても返事がない。ソファの方を照らすと、ソファにもたれて目を閉じる里依が目に入った。ソファの上ではなく、カーペットの上に腰を下ろしてというのがいかにも里依らしくて、三澄は苦笑した。ゆっくりと近付き、頬に触れると少し冷えていた。
「…やっぱりちゃんとベッドまで案内してしまえばよかった。」
テーブルの上にあるペンライトやリングライトを持って、寝室までの道に置く。里依を抱えれば手が使えずに明かりがなくなってしまうからだ。ライトの方を天井に向けて、寝室のサイドテーブルの上にスマホを置いた。寝かしやすいように、ベッド上の布団はめくっておく。
里依は声を掛けても頬に触れても起きる様子はなかった。さすがに抱えたら起きてしまうかもしれないが、それはそれ。今は一刻も早く温めてあげたかった。
持ち上げても里依が目を覚ますことはなかった。よほど疲れていたのだろう。そう思うと少し気持ちが苦しくなったが、それと同時に意図せずこんなにも至近距離で寝顔を見ることができたことを喜んでいる自分もいた。また脳内で自分を戒める。
(…だから、本当に不謹慎だって。)
そう思うものの、可愛いのだから仕方がないとも思う。すりと、おそらく温もりを求めてだろうが、里依が三澄の方に体を寄せた。ドクンと緊張とときめきが体を走る。
「里依…さん…?」
返事はない。ただ可愛い寝顔がそこにある。可愛い以外の言葉で表現したいのに、浮かばない。これはきっと、いわゆるファンの人たちがよく言っている尊いというものと同じ感覚なのではないかと思う。それ以外の感情もあるのに、上手く言葉に落とし込めない。今この表情を見落とさないように必死に目を使っているから、言葉をつかさどる脳まで神経が行き届かないのだ。
リングライトやペンライトの明かりを頼りに、寝室に向かう。里依をゆっくりと降ろし、肩まで布団をかける。穏やかなままの寝顔に、三澄は安堵した。里依のすぐ近くに腰を下ろして、改めてその寝顔を見つめる。少しでも安心してくれただろうか、怖い気持ちはなくなってくれただろうか、そんなことを思いながら今日の里依の表情を思い出す。たくさん笑って、目を輝かせて、泣いて、ほっとした表情を見せてくれて。触れた手は小さくて綺麗で。もっと近付きたいけれど、怯えさせたいわけでも、すぐにどうこうなりたいわけでもなくて。だから三澄は部屋を後にする。これ以上一緒に居たら多分、もっと触れてしまうだろうから。
「…おやすみ、里依さん。」
「里依さん…?」
呼びかけても返事がない。ソファの方を照らすと、ソファにもたれて目を閉じる里依が目に入った。ソファの上ではなく、カーペットの上に腰を下ろしてというのがいかにも里依らしくて、三澄は苦笑した。ゆっくりと近付き、頬に触れると少し冷えていた。
「…やっぱりちゃんとベッドまで案内してしまえばよかった。」
テーブルの上にあるペンライトやリングライトを持って、寝室までの道に置く。里依を抱えれば手が使えずに明かりがなくなってしまうからだ。ライトの方を天井に向けて、寝室のサイドテーブルの上にスマホを置いた。寝かしやすいように、ベッド上の布団はめくっておく。
里依は声を掛けても頬に触れても起きる様子はなかった。さすがに抱えたら起きてしまうかもしれないが、それはそれ。今は一刻も早く温めてあげたかった。
持ち上げても里依が目を覚ますことはなかった。よほど疲れていたのだろう。そう思うと少し気持ちが苦しくなったが、それと同時に意図せずこんなにも至近距離で寝顔を見ることができたことを喜んでいる自分もいた。また脳内で自分を戒める。
(…だから、本当に不謹慎だって。)
そう思うものの、可愛いのだから仕方がないとも思う。すりと、おそらく温もりを求めてだろうが、里依が三澄の方に体を寄せた。ドクンと緊張とときめきが体を走る。
「里依…さん…?」
返事はない。ただ可愛い寝顔がそこにある。可愛い以外の言葉で表現したいのに、浮かばない。これはきっと、いわゆるファンの人たちがよく言っている尊いというものと同じ感覚なのではないかと思う。それ以外の感情もあるのに、上手く言葉に落とし込めない。今この表情を見落とさないように必死に目を使っているから、言葉をつかさどる脳まで神経が行き届かないのだ。
リングライトやペンライトの明かりを頼りに、寝室に向かう。里依をゆっくりと降ろし、肩まで布団をかける。穏やかなままの寝顔に、三澄は安堵した。里依のすぐ近くに腰を下ろして、改めてその寝顔を見つめる。少しでも安心してくれただろうか、怖い気持ちはなくなってくれただろうか、そんなことを思いながら今日の里依の表情を思い出す。たくさん笑って、目を輝かせて、泣いて、ほっとした表情を見せてくれて。触れた手は小さくて綺麗で。もっと近付きたいけれど、怯えさせたいわけでも、すぐにどうこうなりたいわけでもなくて。だから三澄は部屋を後にする。これ以上一緒に居たら多分、もっと触れてしまうだろうから。
「…おやすみ、里依さん。」