ファンは恋をしないのです
「なんで伏せたの。」
「既読がついてもつかなくても気になっちゃうから。」
「私に素直に言わなくていいから、三澄さんにちゃんと言いなさい。」
「…そんなの無理だよ。」

 里依の泣き言を消すかのように、スマホが震えた。近くに置いていたグラスが揺れて、パッとスマホをひっくり返すと、三澄からの着信だった。

「着信!」
「出な!」

 怜花の圧に押されて、通話ボタンをタップする。耳にあてながら、里依は足早に店外に出る。

「もしもし。」
『あ、ごめんね。今大丈夫?』
「は、はい!すみません、いきなり連絡してしまって。」
『あ、ううん。それを言うならこっちでしょ。里依さんから連絡来たのが嬉しくて、声も聞けたらなって思って電話にしたんだけど、もしかして外にいる?』
「あっ、うるさいですか?一応外には出たんですけど、家にはまだ帰ってなくて…。」
『やっぱり外なんだ。里依さんが家に帰ってからかけ直そうか?外、寒いよね?』
「いえっ!大丈夫です!お手を煩わせるわけにはいきませんので。あのっ、三澄さんからお借りしたもの、全部洗濯も終わっていつでもお返しできる状態ではあるのですが、どうお返ししたらいいかなって悩んでいまして…ずるずるとこんなに長くお返しできずにすみません。」

 里依は一気に思っていたことを言い切った。すると、電話越しに三澄が小さく笑った声がした。

『…里依さん、一気に喋ったね。』
「さ、さっきまで怜花に相談してたので…意外と頭の中でまとまってました。」
『そういうことか。背中を押されて連絡してくれた感じ?』
「…はい。いつもいつも不甲斐なくてすみません。」
『ううん。里依さんから連絡してくれたのが嬉しいよ。ずっとね、連絡しようかなって思ってたんだけど…俺から連絡きたら、里依さんが緊張したり慌てたりしちゃうかなって思って。…微妙ににビビってた部分があるから、俺も不甲斐ないよ。』
「そんなことは…!」
『でも、今は声聞けて嬉しいです。それで、服だっけ?』
「はいっ!」
『…服を返すためだけに会うのは勿体ないので、もし良ければでいいんだけど。』
「はい…?」
『今度、デートしてもらえませんか?』
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