ファンは恋をしないのです
「…わ、わかりました。三澄さんが攻撃をやめないのなら、私にも考えがあります。」
「うん?」
三澄は好奇心に満ちた目で里依を見つめる。里依はカバンのポケットに入っている小さなケースを取り出した。
「耳栓をします!」
「えっ?というか、何で耳栓、携帯してるの?」
「万が一車内や外出中に三澄さんに連絡が来て、私が聞いてはいけない場面に立ち会った時のためにです。」
里依がきっぱり言い切ると、三澄はこらえきれずに吹き出した。
「っ…はは!もうほんっとに面白いし、やっぱり真面目だね。里依さんと一緒にいるのに、里依さん以外のものを優先するはず、ないのに。」
「い、いえっ!仕事は優先されてください!私は速やかに気配を消し、距離を取りますので。」
「それは絶対だめ。」
三澄はすっと里依の手を取った。そしてふわりと微笑む。
「なるべく可愛いって言わないように気をつけるから、里依さんも耳栓はなしで。あと、やっぱり手は繋いで歩きたい。人目があんまりないところだけでいいから。」
どくんどくん、と鼓動がわかる。手に熱が集中する。困っている心よりもずっと、嬉しいが勝ってしまっている。その気持ちが自然に里依の指を動かしてしまう。
三澄の方から握られた手を、里依の指先がきゅっと握り返す。握り返された手に驚いたのは三澄だった。
「え…?」
少しずつ顔が赤く染まっていく里依を見ていると、三澄の口元が緩んでいく。何も言えないでいる里依は、指の力を緩めるわけでもなく、そのままでいてくれる。
「…ありがとう。すっごく嬉しい。一緒に探そ。」
「…はい。」
静かに、それでも確かに伝わる熱に緊張はする。人目が気になるのも嘘じゃない。だけど、『嬉しい』と言ってくれる三澄の表情が同じように嬉しくて、『可愛い』と言ってくれる声が、やっぱり好きで。
つり合ってないこともわかっている。こんなに優しく、真っ直ぐに気持ちを向けてくれる人に、自分はずっと「ダメ」だと言い続けている。向けられている気持ちを見つめ返すことができずに、それでも募る気持ちはあって、宙ぶらりんだ。
「三澄さん。」
「ん?」
「…中途半端で、すみません。」
「…里依さんが謝ることは、最初からずっとないから大丈夫。里依さんが手を握ってもいいかなって思ってくれたことが嬉しいからね。」
三澄の言葉一つ一つが、里依の耳に溶けていく。優しくて、甘くて、そのしびれるような熱は耳を通って心にすとんと落ちていく。そして積もる。理性の上に積もっていくそれのせいで、理性が見えなくなりそうだった。
「うん?」
三澄は好奇心に満ちた目で里依を見つめる。里依はカバンのポケットに入っている小さなケースを取り出した。
「耳栓をします!」
「えっ?というか、何で耳栓、携帯してるの?」
「万が一車内や外出中に三澄さんに連絡が来て、私が聞いてはいけない場面に立ち会った時のためにです。」
里依がきっぱり言い切ると、三澄はこらえきれずに吹き出した。
「っ…はは!もうほんっとに面白いし、やっぱり真面目だね。里依さんと一緒にいるのに、里依さん以外のものを優先するはず、ないのに。」
「い、いえっ!仕事は優先されてください!私は速やかに気配を消し、距離を取りますので。」
「それは絶対だめ。」
三澄はすっと里依の手を取った。そしてふわりと微笑む。
「なるべく可愛いって言わないように気をつけるから、里依さんも耳栓はなしで。あと、やっぱり手は繋いで歩きたい。人目があんまりないところだけでいいから。」
どくんどくん、と鼓動がわかる。手に熱が集中する。困っている心よりもずっと、嬉しいが勝ってしまっている。その気持ちが自然に里依の指を動かしてしまう。
三澄の方から握られた手を、里依の指先がきゅっと握り返す。握り返された手に驚いたのは三澄だった。
「え…?」
少しずつ顔が赤く染まっていく里依を見ていると、三澄の口元が緩んでいく。何も言えないでいる里依は、指の力を緩めるわけでもなく、そのままでいてくれる。
「…ありがとう。すっごく嬉しい。一緒に探そ。」
「…はい。」
静かに、それでも確かに伝わる熱に緊張はする。人目が気になるのも嘘じゃない。だけど、『嬉しい』と言ってくれる三澄の表情が同じように嬉しくて、『可愛い』と言ってくれる声が、やっぱり好きで。
つり合ってないこともわかっている。こんなに優しく、真っ直ぐに気持ちを向けてくれる人に、自分はずっと「ダメ」だと言い続けている。向けられている気持ちを見つめ返すことができずに、それでも募る気持ちはあって、宙ぶらりんだ。
「三澄さん。」
「ん?」
「…中途半端で、すみません。」
「…里依さんが謝ることは、最初からずっとないから大丈夫。里依さんが手を握ってもいいかなって思ってくれたことが嬉しいからね。」
三澄の言葉一つ一つが、里依の耳に溶けていく。優しくて、甘くて、そのしびれるような熱は耳を通って心にすとんと落ちていく。そして積もる。理性の上に積もっていくそれのせいで、理性が見えなくなりそうだった。