ファンは恋をしないのです
10.それぞれの想う先
* * *

「それで?第二回、三澄のハッピー報告会が開催されたわけだけど、結局何があったわけ?」
「…すごいネーミングじゃん、それ。」

 空野のネーミングに三澄は苦笑した。今日はスタジオが近所だったからお昼を一緒に食べないかということで集まっている。二階堂と御堂は次の仕事がないらしい。

「結局、押せ押せ作戦にしてるっていうか…御堂の奥さんのスタイルを真似てるというか…。」
「…多分お前はあいつほど見境なく突進していってないと思うから安心しろ。」
「唯ちゃんはほんっと、御堂が大好きーって感じだったもんね、今も昔も。」
「あいつの話は出すな。」

 御堂がばしっと空野の背中を叩く。日替わり定食を選んだ二階堂は味噌汁をすすった。そして、三澄を見つめて口を開く。

「唯さん?ってのを知らないから、俺と三澄はまぁあんまりよくわかんないけど、でもまぁ、突進したら彼女は逃げてくだろうなぁ。」
「…そう。だけど、ダメ元でデートに誘ったら、オッケーが出たっていうか、…うーん…正式に言えばただのデートっていうよりは、彼女的には会う理由のあるデートだったわけだけど、まぁいっか。デートの帰りさ、ちょっと遠回りして帰りたいって言ったら、それにいいですよーが出たんだよね。」
「えっ!?あの子が?」

 二階堂は里依の様子をよく知っているから驚いたのだろう。『ふーん』と御堂はつまらなそうに相槌を打ち、『うんうん、それで?』と空野は楽しそうに続きを促す。

「…うん。多分、俺が思っているよりもずっと、勇気が要ることだったんだろうなって。もっと話したいって言ってくれて…、初めて、そういう本当の気持ちを話してもらえたんだよね。」
「気持ちを隠しちゃう子なの?表情はわかりやすい感じでもなく?」
「うーん…。」

 里依を表す言葉に嘘をのせたくなくて考え込んだ三澄の横で、二階堂が口を開く。

「隠すっていうか…なんだろうなぁ、隠すのとはなんか違う。声優っていう職業をすげぇ重んじてくれていて、だからこそファンとしての一線を越えないようにって考えてる人…考えすぎでもあるけど。そういう人。好きフィルターなしで見た、一般人の感想。」
「…ちゃんとしてんな。」

 御堂が静かにそう呟いた。
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