ファンは恋をしないのです
 冷蔵庫からハンバーグのタネを取り出し、大きめに三澄の分の形を作る。里依はそこまでお腹が空いてるわけではないため、残った分で充分だった。

「里依さん、手伝えることある?」
「えっ、あっ!だ、大丈夫です!三澄さん、お客様ですし、お仕事後ですからあの、リビングでゆっくり休んでてください。って飲み物を出してなかったですね!それなのに私、手をベタベタにしてしまってました…すみません!喉乾いてないですか?」
「はは。なんか、焦ってる感じとか、ちゃんといつもの里依さんで安心しちゃった。大丈夫。喉乾いてないし、手を洗ってまたハンバーグの形作るの大変でしょ?ここで見ててもいい?邪魔しないから。」
「み、見てても特に凝ったこととか派手なこと、できないですけど…大丈夫ですか?」
「うん。里依さん見てるのが楽しいから。」

 ふにゃっと柔らかく笑った三澄は、なんだかいつもよりも『かっこいい』成分が抜けて、可愛く見える。里依は少し上にある三澄の目に視線を合わせた。

「そ、それって私が百面相だからですか?」
「それもあるけど、里依さんが何考えてるのかなって、里依さんの言葉とか表情から考えるのが癖みたいになってるから。」
「い、今はハンバーグを焦がしたくないって考えてます。」
「あはは!焦げてもちゃんと食べるよ。」
「いえっ!三澄さんの体に毒になるようなものは食べさせられません!」

 形を作り終えた里依は片手だけ洗い、洗った方の手でフライパンに油を入れた。中火で熱し、フライパン全体が温まってきたところでフライパンにそっと置いた。弱めの中火にしてしばらくは放っておく。ハンバーグを入れ終えたので手は綺麗に洗って、その間にスープの鍋を火にかけた。

「あっ、サラダのドレッシング、何がいいですか?そういえば好きなものを聞くのを忘れていて…。」
「何があるの?」
「オニオンドレッシングと青じそ…あ、でも調味料混ぜて作ることもできますよ。」
「里依さん大変になっちゃうじゃん。オニオンドレッシングにする!」
「わかりました。ハンバーグにはご飯ですか?それともパンですか?パンも用意があるのでどっちでも大丈夫です。」
「えっとあの…里依さん。」
「はい?」
「…なんか思ってた以上にその…めちゃくちゃ用意してる?」
「あっ、や、やりすぎてますか?あの、好みがわからなくて最善を尽くそうとしたらとりあえず全部家の中にあればなんとか対応できるかな…と。」

 里依が言い終わったときには、三澄は右手で自分の目元を覆っていた。
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