ファンは恋をしないのです
里依の質問に三澄は少し食事のスピードを落として微笑み、答えた。
「そうだなぁ。野菜は割と何でも好きだよ。スープとか味噌汁とか、汁物が好きだからそれに合う野菜は何でも好き。だから野菜に苦手なものはなくて…ん-…甘いものも結構好きだしなぁ。あ!脂身!肉の脂身、あんまり好きじゃない。」
「そうなんですね。私も自分で料理するときは脂身、切っちゃいます。」
「里依さんも苦手なんだ。里依さんは?苦手な食べ物、ないの?」
「私は…えっと、こんにゃく、です。」
「こんにゃく?」
「あの…食べれないことはないです。三澄さんの言葉を借りるなら、自分で買わないもの…という感じです。」
「はは、わかるわかる。一人暮らしすると自分で買わないものって、実はあんまり好きじゃなかったんだなーって気付くよね。」
(…ちゃんと目を見て話すと…こんな感じだったんだなぁ…。)
三澄と目を合わせて話してこなかったわけではない。ただ、俯いたり、視線が泳いでしまうことが多かった気がする。しかしこうして真っすぐに向き合って、自分から『ファンとして趣味を語る』話ではなく、誰もが普通にするような話を投げかけてみて初めて、三澄がこんな目で自分を見ていてくれたのだということに気付く。ひとつひとつ、里依の言葉を丁寧に拾って、受け止めて、里依が続けやすいように返してくれる。
(…優しい人。本当に。だから今日は、その優しさに報いる自分に、なりたい。)
食事が終わり、食器を軽く水に浸す。少し置いてから片付けることにし、里依はふぅと深く息を吐いた。
「…三澄さん。」
「うん。何?」
「今日は、話を聞いてもらいたくて…来ていただいたんですけど、その話をする前に一緒に観ていただきたいものがあって…。」
「一緒に観る?」
里依はテレビ台の下からブルーレイボックスを取り出した。
「あの日のライブのブルーレイを一緒に観てもらえませんか?ちなみにDay2です。私が行った方のだけで。」
「話は、その後でいいの?」
「はい。その後がいいんです。」
「わかった。映像チェックとオーディオコメンタリーで観たの、結構前だな、俺。」
「…ちなみに私は、今開封します。」
「え?」
「今、初視聴です。」
「そうなの!?なんで!?届いたらすぐ観るのかと…。」
「いつもはそうです。でも今回は、三澄さんと観たくて封印してました。」
三澄と里依の原点であるあの日の映像を観る。きっと、明確に立場の違う自分たちを見つめることになる。それでも、それは必要なことで、一緒にやりたいことなのだ。あの日のことを、思い出すために。忘れたことなどないけれど、あの日に思ったことを言葉にするために映像の力を借りると、そう決めた。
「そうだなぁ。野菜は割と何でも好きだよ。スープとか味噌汁とか、汁物が好きだからそれに合う野菜は何でも好き。だから野菜に苦手なものはなくて…ん-…甘いものも結構好きだしなぁ。あ!脂身!肉の脂身、あんまり好きじゃない。」
「そうなんですね。私も自分で料理するときは脂身、切っちゃいます。」
「里依さんも苦手なんだ。里依さんは?苦手な食べ物、ないの?」
「私は…えっと、こんにゃく、です。」
「こんにゃく?」
「あの…食べれないことはないです。三澄さんの言葉を借りるなら、自分で買わないもの…という感じです。」
「はは、わかるわかる。一人暮らしすると自分で買わないものって、実はあんまり好きじゃなかったんだなーって気付くよね。」
(…ちゃんと目を見て話すと…こんな感じだったんだなぁ…。)
三澄と目を合わせて話してこなかったわけではない。ただ、俯いたり、視線が泳いでしまうことが多かった気がする。しかしこうして真っすぐに向き合って、自分から『ファンとして趣味を語る』話ではなく、誰もが普通にするような話を投げかけてみて初めて、三澄がこんな目で自分を見ていてくれたのだということに気付く。ひとつひとつ、里依の言葉を丁寧に拾って、受け止めて、里依が続けやすいように返してくれる。
(…優しい人。本当に。だから今日は、その優しさに報いる自分に、なりたい。)
食事が終わり、食器を軽く水に浸す。少し置いてから片付けることにし、里依はふぅと深く息を吐いた。
「…三澄さん。」
「うん。何?」
「今日は、話を聞いてもらいたくて…来ていただいたんですけど、その話をする前に一緒に観ていただきたいものがあって…。」
「一緒に観る?」
里依はテレビ台の下からブルーレイボックスを取り出した。
「あの日のライブのブルーレイを一緒に観てもらえませんか?ちなみにDay2です。私が行った方のだけで。」
「話は、その後でいいの?」
「はい。その後がいいんです。」
「わかった。映像チェックとオーディオコメンタリーで観たの、結構前だな、俺。」
「…ちなみに私は、今開封します。」
「え?」
「今、初視聴です。」
「そうなの!?なんで!?届いたらすぐ観るのかと…。」
「いつもはそうです。でも今回は、三澄さんと観たくて封印してました。」
三澄と里依の原点であるあの日の映像を観る。きっと、明確に立場の違う自分たちを見つめることになる。それでも、それは必要なことで、一緒にやりたいことなのだ。あの日のことを、思い出すために。忘れたことなどないけれど、あの日に思ったことを言葉にするために映像の力を借りると、そう決めた。