ファンは恋をしないのです
 映像が終わり、エンドロールが流れる。いつものテーマソングのバンドアレンジのBGMの音が少しずつ消えていき、ブルーレイのトップ画面に戻ってきた。里依はデッキの電源と、テレビの電源を落とし、三澄の方を向いた。

「ふぅ。すみません、ちょっと深呼吸させてもらってもいいですか…。」
「えっ…もちろんいいけどあの…そんなに深刻な話…?」
「深刻というか…真剣な話です。」

 里依は正座をして、真っ直ぐ三澄の瞳を見つめた。

「えっ、正座…?足、痛くない?」
「こ、これは…けじめなので…!」
「そっか。じゃあ俺も正座した方がいいかな?大事な話なんだろうし。」
「いえっ!三澄さんは楽にして聞いてください!」

 里依がそう言うと、三澄は苦笑した。

「里依さんがそんなに緊張してるのに、俺だけリラックスできないよ。…緊張する話?」
「…は、はい。でも、今日、今までのお礼も兼ねてお話したいって…思っていて…。」

 三澄がどんなときも里依の言葉を急かさずに聞いてくれる人だと知っている。何も怖がることはない。頭ではわかっているのに声が震えて、視界がゆらゆらと揺らぐ。泣きながら話したい話ではないからこそ、どうにか自分の目には堪えてほしかった。
 三澄の右手が、里依の左頬に優しく触れた。そこから伝わる熱が、里依に安心感を与えてくれる。

「どれだけ時間がかかっても大丈夫だから、そんなに泣きそうな顔しないで。…里依さんが泣くと、抱きしめたく…なっちゃうんで。」

 本当は、自分だって抱きしめてほしい。…なんてことは、言えない。それは、甘えだ。少なくとも、三澄にしっかりと気持ちを伝えるところまでは自力で成し遂げたい。里依はぐっと両手に力を込めた。

「…三澄さんが話してくれた気持ちに対しての答えを、…話します。」

 里依は一度ふうと小さく息を吐いた。
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