ファンは恋をしないのです
12.ファンは恋をしたのです
「私はずっと…その、ファンとしてきちんと在りたいと思っていました。」
「…うん。そうだね。」
里依は頷く。三澄もそういう里依を感じていたはずだ。
「三澄さんのお仕事が大切だし、三澄さんのことも…ライブで見て、目が合った、あ、これはあったように思ったってだけの話なんですけど、あの時からずっと、キラキラでかっこよくて、素敵で。だから、ファンとして応援したいなって思って、ずっと声優さんとして活躍してもらいたいと思っていて。」
「…うん。」
「だから、私という一般人は、そばにいたらいつか迷惑をかける。…邪魔に、なる。そう思っていたのは、本当、です。」
「うん。」
三澄の手が、里依が膝の上でぎゅっと握った拳の上に乗った。三澄の手の温かさに、力が解けて里依の拳は形をなくした。緩んだ手の指先を三澄が優しく握る。三澄に手を握られると、緊張よりも少し安心するようになってしまった。これが、今の里依と三澄の距離なのだ。
「でも三澄さんが、声優さんとしてではない笑顔を向けてくれるようになって、…その笑顔が舞台上のものとは違うんだってことが、映像を観たらより一層その違いがわかってしまって。」
「…うん。違うよ、そりゃあ。里依さんの前だともっとカッコつけようとしてるし、でも里依さんの可愛さに負けてかっこつかなかったりしてる。」
「…ちゃんと、ずっとかっこいいですし、優しいです、三澄さん。」
「…ふふ、ありがとう。」
消え入るような声で、里依が呟く。三澄の手が里依の指先を愛おしげにさすった。
「…三澄さんの言葉を疑っていたことは一度もないんですけど、でもその…なんで私を好きなのか、全然、うまく飲み込めなくて。…でも、三澄さんが向けてくれた笑顔が、こうやって繋いでくれる手が、…かけてくれる言葉がずっと、ずっと優しくて温かくて…。…それが本当にずっと、嬉しかった。声優さんだからじゃなくて、三澄さんだから嬉しかったです。本当は嬉しかったのにずっと言えずに、待たせてしまってすみません。」
里依は静かに頭を下げた。里依の指を握る三澄の手の力が強まって、それに気付いた里依は顔を上げる。
「返事はくれてもくれなくてもいいって言ったの、俺だから、里依さんは謝らないで。むしろごめん…俺、今めちゃくちゃにやけちゃう。」
「…にやける…?」
「…だって嬉しいもん。声優の俺じゃなくて、今里依さんが見てるのは、ただの俺ってことでしょ?」
左手で口元を隠した三澄が、隠しきれずに染まった頬のまま、そう言った。
「…うん。そうだね。」
里依は頷く。三澄もそういう里依を感じていたはずだ。
「三澄さんのお仕事が大切だし、三澄さんのことも…ライブで見て、目が合った、あ、これはあったように思ったってだけの話なんですけど、あの時からずっと、キラキラでかっこよくて、素敵で。だから、ファンとして応援したいなって思って、ずっと声優さんとして活躍してもらいたいと思っていて。」
「…うん。」
「だから、私という一般人は、そばにいたらいつか迷惑をかける。…邪魔に、なる。そう思っていたのは、本当、です。」
「うん。」
三澄の手が、里依が膝の上でぎゅっと握った拳の上に乗った。三澄の手の温かさに、力が解けて里依の拳は形をなくした。緩んだ手の指先を三澄が優しく握る。三澄に手を握られると、緊張よりも少し安心するようになってしまった。これが、今の里依と三澄の距離なのだ。
「でも三澄さんが、声優さんとしてではない笑顔を向けてくれるようになって、…その笑顔が舞台上のものとは違うんだってことが、映像を観たらより一層その違いがわかってしまって。」
「…うん。違うよ、そりゃあ。里依さんの前だともっとカッコつけようとしてるし、でも里依さんの可愛さに負けてかっこつかなかったりしてる。」
「…ちゃんと、ずっとかっこいいですし、優しいです、三澄さん。」
「…ふふ、ありがとう。」
消え入るような声で、里依が呟く。三澄の手が里依の指先を愛おしげにさすった。
「…三澄さんの言葉を疑っていたことは一度もないんですけど、でもその…なんで私を好きなのか、全然、うまく飲み込めなくて。…でも、三澄さんが向けてくれた笑顔が、こうやって繋いでくれる手が、…かけてくれる言葉がずっと、ずっと優しくて温かくて…。…それが本当にずっと、嬉しかった。声優さんだからじゃなくて、三澄さんだから嬉しかったです。本当は嬉しかったのにずっと言えずに、待たせてしまってすみません。」
里依は静かに頭を下げた。里依の指を握る三澄の手の力が強まって、それに気付いた里依は顔を上げる。
「返事はくれてもくれなくてもいいって言ったの、俺だから、里依さんは謝らないで。むしろごめん…俺、今めちゃくちゃにやけちゃう。」
「…にやける…?」
「…だって嬉しいもん。声優の俺じゃなくて、今里依さんが見てるのは、ただの俺ってことでしょ?」
左手で口元を隠した三澄が、隠しきれずに染まった頬のまま、そう言った。