ファンは恋をしないのです
「…やっと、ただの三澄さんを見れるようになったと思います。声優さんとして出会ったけれど、緊張する気持ちも、恥ずかしい気持ちも嬉しい気持ちも全部、三澄さんがくれました。舞台上の三澄さんだけじゃなくて、私の目の前にいる三澄さんが…わ、私もちゃんとす…好き、です。」
「…ほんと?」
「…本当、です。自信はないし、また考えたって仕方のないことで不安になったり、ファンとしての在り方を考えてしまうと思うけど…でもそれは、そういうことに悩んだときは、三澄さんに大丈夫って、言ってもらいたい、です。我儘でごめんなさい。…でも、好きな人、だから。」

 好きで、大切な人だから、あなたの言葉が大きな後押しになる。

「…我儘、言ってよ。何でも言って?というかさ、…はぁ~もう、…可愛さで死んじゃう、俺。こんなに話してくれるなら、俺ももっとたくさん言ってから告白するんだった。…やり直しってわけじゃないけど、俺も言っていい?ずっと我慢してたこと。」

 我慢という言葉に里依はハッとした。我慢させているだろうとは思っていたが、本人から言われると背筋に緊張が走る。

「が、我慢…!すみません!何なりとおっしゃってください!我慢をさせていたというのは一体…?」

 三澄が距離を詰めてくる。真っ直ぐに里依の目を見て、三澄は口を開いた。

「…可愛いも大好きも、もっとずっと一緒にいたいも、ずーっと言いたかったこと。それこそ、電話で声を聞くたびに言いたかったことだよ。でも、里依さんの気持ちが俺にないのに、たくさん言ったら困らせることだってわかってたから言わないでいたけど…。」
「……。」

 たくさん、里依のことを思ってくれていた。里依よりも里依のことをわかってくれているかもしれない。そう思うと胸のあたりがきゅっとする。

「…でも、今日から解禁するね。…もう、我慢はしないから。」

 三澄の両手が、里依の両頬に触れた。額が触れあって、その距離の近さに里依は目を閉じた。

「…里依さん、目開けて。」
「ち…近くてっ…!」
「…目、合わせたい。ちゃんと見て。だたの俺のこと。目、逸らさないで。」
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