低温を綴じて、なおさないで



すきかきらいか、より、付き合っているか付き合っていないか。すこしでも好意があれば、恋人になれる。恋愛としてででなくても、一緒にいて落ち着く、楽しい、安心する、がすこしでもあればわたしが付き合おうと思うひとの条件には乗ったし、それを“すき”だと思うこともできた。



葉月くんがわたしを彼女にするなら、いい。



だけど葉月くんがわたしを彼女にしない確信があったから、わざとこの言葉を投げて拒んだ。ここまでは葉月くんに乗せられすぎず、うまくいけたと思う。──次に葉月くんが発した言葉を聞くまでは。




「……南雲直とは、できるのに?」




つめたいトーンが、鼓膜を揺さぶりあげて、そのまま脳内を貫かれた気がした。




「、な、んで、」


「雰囲気でわかるよ、関係のある男女なんて」




直の名前が出てきて、怯んだ。動揺した。瞳が、揺れてしまった。たぶん、どうしようもなく隙が生まれて、葉月くんがそれを見逃してくれなかった。




「……っ、ん、」




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