低温を綴じて、なおさないで


大学一年の春。きらきら輝くキャンパスライフに胸を躍らせていた。まだ栞とは出会っていなかったころ。



たまたま参加したテニスサークルの新歓に、あのひとがいた。



一緒に参加する予定だった子が急遽来れなくなって、ひとりではしっこに座って視線をゆらめかせていたら、導かれたように、見つけてしまったんだ。



私の座る対極のテーブルで、ひときわ輝く彼のことを。



世間的には、一目惚れ、ってやつなんだと思う。一目見た瞬間に、私の心に恋が降り注いで溶け込んだ。季節はずれのきらめくダイヤモンドダスト。



大勢に囲まれて、そのひと以外はぼやけてモザイクがかかったように見えた。そんなふうに誰かが映ったこと、今までなかった。



太陽みたいなひとだと思った。まわりのひとは月で、太陽みたいな彼が照らして、周りが反射しているみたいに見えた。



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