低温を綴じて、なおさないで



右側のブランコから土を掠める音がして顔を上げれば、直に腕を引かれてそのまま腕の中へ引き入れられた。


勢い余って両手で握りしめていたカイロとペットボトルが足下に転がる。わたしを力強く抱きしめてくれるその手、もう、離したくない。




「俺ずっと、怖くて。栞と同じ。幼なじみのままで隣にいてくれるならそれでいいって言い聞かせてた。この世界に、何人彼女ができようが、栞を超える特別な子も好きな子も、現れないのに」




合わさった体温が、すこし離れる。見上げるように視線を重ねれば、いつも通りのやさしくて柔らかい笑みが向けられる。


茉耶と話して散々泣いたからか、涙腺がゆるくて、また泣きそうになって表情を作る余裕がない。




「栞が幸せなことが俺の幸せであることは前提で、俺の幸せを作れるのは栞しかいないよ」


「わたしも、同じ……!直の幸せがわたしの幸せ、だけどわたしだけを見てくれていたらもっと幸せだし、その幸せにわたしがずっと関わっていたい。一生隣にいてくれたら、何も望まない」




たぶんわたしは直限定ですっごく重くて面倒で、だけどそれも全て、掬って抱きしめてくれると確信してる。


だって、直のこといちばん近くでずっと見てきたのはわたしだから。


直の手がわたしの頬を包む。いつもつめたいきみの手があったかい。



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