低温を綴じて、なおさないで



𖤐ˎˊ˗




「……手、繋いでもいい?」


「……うん、」




控えめに繋がれた手、もうひんやりつめたくなっていたけど、直のコートのポケットに収まったおかげで温かくなる予定ができた。



「離れたくないから、俺の家、来てくれる?」って、信じられないくらい自信がなさそうに誘われてしまった。たぶんこの世の中に数多溢れる誘い文句の中でいちばん控えめだ。



いやだなんて言うわけないよって意味も込めてわたしからキスをしたら、わかりやすく耳まで真っ赤に染めるから初々しくて可愛いって感情まで芽生えてくる。



拒否なんてしないのに、案外きみは臆病なのかも。



自然と笑みをこぼしてしまって、そんなふうにすこし勝ったような気持ちでいれば、そんなわたしに気づいてなのか、栞、と呼ばれたその次の言葉でわたしはまんまと顔を赤くしてしまった。



< 296 / 314 >

この作品をシェア

pagetop